アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの会長に選出された時のお話です。
【前回】PTAの旅行計画を副会長に任せた結果...「まだ申し込んでいない」ってどうするつもり!?
PTAの日帰り親睦旅行当日を迎えた。
集合場所に早めに着いた私が目にしたのは、ハイテンションで大声を上げて笑いながら先生方と喋りまくっている下条さんだった。
勝手に何喋っていようがお好きにすればいいが、集合場所に停まっている観光バスには『○○高校PTA御一行様』と書かれてあるんだから下ネタを含めた会話はやめて頂きたい。
「下条さん~、シッ!!!」
満面の笑みで近づき、口に人差し指を立てて睨んで言ってやった。
「バスに学校名が書かれてあるんですから!! 先生たちもです!!」
下条さんと一緒にバカ話をしていた先生たちも、バツが悪そうにバスに乗り込んでいった。
PTAの親睦旅行には、校長・副校長・教頭・事務長・教務主任と参加するからか、先生方たちはおのずと全員参加みたいなものなのでやたら参加人数が多い。
前年は副会長だった私が担当したので、こんなに大勢参加する事にびっくりしたのを思い出す。
教職員の雇用状況を詳しく聞いた事は無かったが、私立の高校だからなのかここだけなのかは知らないが、この高校の教職員は単年契約で更新型らしかった。
いわゆる成果が見られない教職員は、翌年には契約が更新されずにクビになると言う。
タダ酒大好きな教職員だけでなく、少しでも上役へアピールするためでもあるのだ。
大型バスの補助席も使ってほぼ満員(50名ほど)の人数が乗るバスで、何が嫌かと言うと先頭の座席にずっと校長と一緒に座らなければならないのが悩みのタネだった。
前会長は男性だったので自然と「会長は校長の横にどうぞ」と言っていたが、いざ自分が会長になってみるととんでもないと真っ先に思った。
旅行会社の添乗員さんに走り寄り「校長の横は副校長で、私は役員さん達と座りますからよろしく!」と耳打ちし、そそくさと最後部の座席に座り込んだ。
校長だって往復数時間も私と喋る事なんか無いだろうよ。
しかしながらこんな時に余計な事を言い出す奴はいるもので、PTA担当になった倉木先生がなにを張り切ってるんだか「あれっ!? 会長! 校長のお隣! こっち! こっち!」と手招きをしている。
「いやっ! 私車酔いするもんで! 後ろで!!」
「会長、車運転しますやん!」
「自分の運転は大丈夫ですけど、他の人の運転は酔うんです!」
本当なんだからしょうがない。
そうこう言いながらバスは発車し、観光場所に立ち寄りながらお昼の宴会場のお料理屋さんに着いた。
添乗員さんに促されながらバスを降り、参加者たちがどやどやと階段やエレベーターで上階に上がっていく。
私は最後でいいなと思いながら、添乗員さんにこの後の予定の確認しながらエレベーターを待っていた。
エレベーターが着いたので乗り込もうと思ったら、なんと中から会計の黒木さんが血相を変えて出てきた。
「か、会長! えらい事です!!」
「は?? どないした??」
「宴会場に全員が入れません!! 30人ほどしか入られへんのです!」
「えーーーー!!!」
私は隣にいた添乗員さんの顔を思わず見た。
添乗員さんはと言うと、『何か問題でも?』と言いたげなキョトン顔だ。
とりあえずエレベーターに乗って宴会場に向かうと、入り口付近に宴会場に入れない参加者が溢れ返っていた。 かき分けながら中に進むと、校長たちお偉方は既に正面に並んで座っている。 恐らく校長の隣が空いているのは私の席なのだろう。
「会長さん! どないなっとんのかなぁ?」
校長がそう言うが、どないなっとんのか聞きたいのは私の方だ。
一旦廊下に出てみると、添乗員さんが参加者たちに4~5人の個室に行くよう割り振って案内していた。
「あの! 全員で一つの宴会場やないんですか!?」
「はい、50人分の昼御膳のご用意と聞いていますので...」
「あのですね...、毎年この旅行のお昼は大広間での昼宴会なんですけど。 昨年は私が担当してそれでお願いしまして大広間だったんです。校長ご発声の乾杯があるのでみんな一緒のお部屋やないと困ります! 単なる昼ご飯食べに寄ったんやないんで!」
「そう言われましても...」
「ここは大広間は無いんですか?」
「ここにはありません...。あの、結構お話し頂いたのもギリギリでしたし、大広間でとお聞きしていなかったので...」
恐らく下条さんが旅行会社に伝えていなかったんだろう。
引継ぎで渡した注意事項の中に『必ずお昼は大広間で』と書いてあったのに。
「下条さんは!?」
心配そうな顔で周りにいた本部役員達の顔の中に、そう言いや下条さんがいない!
「下条さん探して! 今すぐ!」
黒木さんが一番にダッシュして行き、本部役員達も下条さん探しに散って行った。
「いました! 下条さんいました!」
ほったらかしになっていた校長たちに事情を説明するために戻っていた私に、息を切らして黒木さんが走ってきて耳打ちした。
「どこに!?」
「こっちです! 飲んでます!」
飲んでます!?
校長たちに一礼をして黒木さんの後に続いた。
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。