勝手に「終活」を進める父。そのうちに音信不通になり...残された私たちの虚無感【みなさんの体験記】

「60代の男性です。人は歳をとると子どもに戻ると言われます。自分でできることが減って、いろいろと周囲の助けを必要とするようになっていく、という意味もあるのでしょう。しかし、家族に面倒をかけるのは申し訳ないと思い、身の処し方を考えたとき、私の父はかなり極端な方法を選んでしまいました」

アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?

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■突然世捨て人になってしまった父。音信不通にしびれを切らし...

昨年(2023年)の冬に、突然老人ホームに体験入所してしまった父(92歳)ですが、結局そのまま正式契約してしまいました。

何事も自分で決め、自分でやってしまう性格ですので、その事自体はしょうがないと思うのですが、入所後に兄(64歳)夫婦を含めて一切連絡を絶ってしまったので困っています。

「この正月はどうするつもりなんだろ?」

年末も押し迫ったある日、私は兄に電話してみました。

「さあなあ、なんせこっちからの連絡を受けてくれないし...」

兄は相変わらずの浮かない声でこう言いました。

「施設の人づてではあるけど、一時帰宅の希望を出してるか聞いてみるか...」

実の父親なのに伝言ゲームでしか話ができないというのはなんともおぼつかない話です。

「こうなったら俺が直接、話をしに行ってみるよ」

しばらく実家に帰っていなかったこともあるので、突撃で訪問しようと思ったのです。

「会ってくれるかどうか...俺たちは何度行っても門前払いだからな」

「俺がこっちからわざわざ出向いて兄貴たちと一緒に行けば、さすがに顔ぐらいは見せてくれるんじゃないかな?」

ということでアポも取らず、というよりは取れない状態なので、私と兄と義姉(58歳)の3人で直接施設に行きました。

■突然の訪問にも頑なに面会を拒む父。その思いとは...

年末になって、施設に出向き面会を申し出ました。

「申し訳ありません。もう俺はいないものと思ってほしい、とおっしゃって...」

担当の方が代わりに出てきて、地方から出向いてきた私がいても、まさかの面会拒否でした。

「やっぱりだめなんですか? なぜそんなに頑なに...」

ずっと父の世話をしてくれていた義姉は万策尽きたという感じでうなだれました。

「もう家のことは忘れた。ここが俺の家だ、とおっしゃって、正月も戻る気はないと...」

「とりあえず話だけでもできませんかね?」

「申し訳ありませんが、入所者の方にはっきり断られた以上、どなたであってもお通しすることは...」

取り付く島もありません。

「いや、しかし体調とかも心配ですし...今後のことも話さないと」

「いまはとてもお元気でお過ごしですし、万が一の場合もケアは万全ですから体調面はご心配いりません」

さらに担当の方は続けます。

「もしものときのことは代理人の弁護士に頼んであるから心配するな、と。みなさんには自由にやってほしい、とおっしゃっていますが...」

2021年に母が89歳で亡くなったとき、父はその葬儀の一切を取り仕切り、母の知人への挨拶回りだけは珍しく私に「車を運転してくれ」とお願いしましたが、そのほかのことは全て自分で済ませました。

生前、母のことを気にかけている様子はなかったので意外でした。

いま思えば、親のことで子どもに面倒をかけない、という強い意志の現れだったのかもしれません。

どうやら父なりに「終活」をしているつもりなのでしょう。

自分のことで子どもの手を煩わせることを、徹底的に排除しようとしているに違いありません。

ただ、ここまで完全にコミュニケーションを絶たれてしまうのは、正直苦痛でしかありません。

「お父様はお元気ですし、所内にお友だちもできて、穏やかに暮らしていらっしゃいます。その点はご心配なく...」

我々の憔悴ぶりに気を遣ってか、担当の方に慰められる始末でした。

結局、収穫なしで帰途についた3人は、車内でもため息ばかりでした。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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