「50代の男性です。自分を敏腕と謳うとある会社の社長が、何を血迷ったか、行きつけの店に来た営業スタッフに余計な質問攻め、挙句の果てに説教が始まって...」
アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?
■病み上がりの私が出くわした厄介な人物
10年程前に長期入院したことがあります。
退院後は歩行のリハビリが必要だったのですが、小さな飲食店を1人で経営する40歳の友人が、社会復帰も兼ねてと声をかけてくれました。
私が仕事に復帰するまで、無理ない範囲で店を手伝うよう提案してくれたのです。
そうして復帰するまでリハビリを始めた私ですが、店の常連客の中に、小さいながらも会社を経営する48歳の社長がいました。
友人によるとかなりのお得意様で、店の経営についてアドバイスをくれるため初めはありがたく思ったそうです。
実際、私の前でも長々と講釈が続くことがよくありました。
ただし、それは自分の経営者としての腕をひけらかしたいだけのようで、友人はいつもにこやかに話を聞いていましたが、内心「疲れる人」と思っていたようです。
■備品の営業スタッフと厄介な社長が蜂合わせ
ある日、いつものようにその社長がカウンターで講釈をたれていると、飲食店関連の備品を販売している20代後半と思われる営業がアポなしでやってきました。
彼は友人に何度も頭を下げ、パンフを開いて手短に商品の説明を始めました。
相手によっては早々お断りする友人も、その営業スタッフの真摯な態度にきちんと対応していました。
そのとき、パンフを覗いていた社長が口を挟みました。
「お兄さん、それ、こっちとセットにできないの?」
「申し訳ございません、そういった形の販売はさせていただいていないのです」
社長はふんふんと頷き、さらに横から口を出します。
「じゃあこれをそちらが言う契約でやったらどうなるの?」
「ええとですね」
やり取りがしばし続いた後、営業の説明が止まりました。
「申し訳ありません。ただいま確認いたしますので」
会社か上司に連絡するようで、彼はスマホを取り出しました。
「ちょっと待って!」
すかさず社長が制しました。
「君、自分から売りに来たんだろう。こっちから頼んだわけじゃないよね」
「申し訳ありません」
社長は勝ち誇ったように笑いました。
「マスターも忙しいんだよ。勝手にやってきて、質問されるとちょっと待ってって? だめだねえ! こんなこと上司に知れたらどうなるの? うちの会社だったらクビだよ」
社長は満面の笑みで声のトーンを上げます。
友人は顔をしかめていましたが、社長がこうなると止まらないのはいつものことでした。
「何が悪いか、分かる?」
「申し訳ありません」
顔面蒼白の営業はひたすら頭を下げますが、社長は相手が弱ければ弱いほどヒートアップするタイプなのです。
「営業に出るとき、どれくらい準備に時間をかけてるの?」
こうして社長の説教は30分も続き、その間に浮かべていた笑顔はとても醜悪でした。
「本当に申し訳ありませんでした」
真面目そうな営業はがっくりと肩を落とし、確認の電話をかけることなく店を後にしました。
「きっちり準備してから出直しておいで」
社長はその背中に向けて、さも優しそうに言いましたが、再び来ることはないでしょう。
営業が出て行き一息つくと、社長はおどけたように「またやってしまった!」と言いました。
おや、この人でも反省するのか、一瞬そう思った私は本当に愚かでした。
「1円の儲けにもならないのに、他社の社員まで教育してしまった!」
そう言って高らかに笑いました。
他人の店に来た営業を勝手に追い返すほうが余程、非常識だと思うのですが、社長は正義の味方気取りでした。
社長が上機嫌で帰ると、友人は深く溜息をつき、「悪い人じゃないんだけど」とつぶやいていました。
彼の会社の社員たちが気の毒になった出来事でした。
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