アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
3カ月間の短期契約で子ども服店のアルバイトをしていた時のお話です。
※登場人物はすべて仮名です
【前回】2カ月連続で給与未払い。泣き寝入りするものか! 私はバイト先の「裏帳簿」を取り出して...
経理の奥様に即日解雇を言い渡されたが、即日解雇とは言うものの、その日の締めまで一人でして帰れということには変わりないので、粛々とミッションを進める事にした。
おそらく経理の奥様からすると、私がすんなりと解雇を受け入れて泣き寝入りすると思ったのだろう。
「あらあら~、ご立派な知識がおありなんですね~」と奥様は私に言ったのだから、そのご立派な知識を使わせて頂こうじゃないか。
実を言うと民間資格だが、当時短期講座で労務管理士の資格を取りに行ったところだったのだ。
周りはみな会社員ばかりの受講者の中、一人普段着で買い物ついでのような服装で受講していたので不思議そうな目でじろじろ見られていたのが思い出される。
ただ、履歴書にそれを書くと「めんどくさそうな奴」だと思われる気がしたので書かなかったのだ。
こんないい加減な勤務内容や給与なら、最初から履歴書に書いていたら不採用だったに違いない。
とりあえず店を閉めてから、第一のミッションとして不正経理の裏帳簿とクレジットカード払いの控えの束を画像で記録した。
もちろん後で必要になるので、バイト開始日からの勤務時間が印字されているタイムカードのコピーも取った。
さて、第一ミッションの仕上げに行きましょうか。
その日の売り上げが記録されているレジのジャーナルと現金を店名の書かれた指定の袋に入れ、店が入っている大型ショッピングセンターの管理会社の事務所に行く。
いつもならそこの事務員さんに「今日の売り上げです」と言って袋を渡せば終わりなのだが、その日はそれでは終わらない。
「あの~、すみませんが責任者の方っていらっしゃいますか?」
事務員さんはキョトンとした顔で私を見た。
「はい、なんのご用でしょうか?」
「ちょっとお話がありまして...」
私が事務員さんとそう話しをしているのが聞こえたようで、責任者と見える方が出てこられた。
「はい、なんのお話でしょうか??」
「ちょっと聞いて頂きたい事がございまして」
奥の応接室のようなところに通された。
「ここのショッピングセンターに入っているお店の店賃は、基本の店賃プラスお店の面積に合わせて総売り上げの何%って決まっているんですよね?」
「ええ、そうですけど...」
いきなりこのおばちゃんは何の話をしだすのか、出店でも希望するのかと責任者の方は訝(いぶか)しげに私を見る。
「私○○の店員だったんですけど、今日解雇になりましてね」
「えぇ~...」
そんな事を聞かせてどうするつもりだと言わんばかりの表情の責任者。
まぁ、そりゃそうだ。
本題はこれからである。
「○○って現金売りのみでの契約だと思うんですが、違いますか? 周りのお店の店員さんと仲良くなるにつれて色々話を聞きまして、店賃が総売り上げに対して変動するって聞いたんです」
そこで先ほどの事務員さんが契約書を確認してくれたようで、「○○は現金販売のみになっています」と横からサポート。
「○○は来月末で契約終了で閉店しますよね? 私の解雇理由は給料の未払いなんですが、その話ではなく、これを見ていただけますか?」
私は携帯の画像データを見せながら説明しだした。
「おいっ!A君!B君!C君!来てくれ!」
責任者の方はいきなり立ち上がり、数人の名前を大声で呼んだ。
するとどやどやと社員さん達が応接室に入ってきて、私と責任者の周りを囲むように立った。
「この写真一緒に見てくれ!」
私は画像を見せながら一枚一枚説明した。
「これがここ数年分のクレジットカードで販売した分の記録です。この帳簿はレジの後ろの棚のここに入っています。この引き出しには売った伝票が入っていて、これがその伝票です。インプリンターはここに入っています」
「この写真、コピーさせて頂いていいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
「今もその引き出しに伝票が入ったままなんですか?」
「はい、いくらかたまった頃に取りに来ているみたいですけど、今も何枚か入っています」
「ここの引き出しには鍵が掛かっていますか?」
「掛かっていません」
そう私が言い終わるのと同時に、責任者の方と社員さん達が何やら打ち合わせをし始め、一気にあわただしくなった。
「そしたら今日はとりあえず全部確認して証拠を押さえてくか!」
「明日朝一で入りますか?」
さながら刑事ドラマのような会話が飛ぶ。
「私は今日で解雇になっていますので明日からは来ません。では」
そう言って帰ろうとする私に、何かあった時に連絡するからと電話番号を聞かれた。
帰りの私は心なしスキップをするかの様な気分だった。
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