私が触ったものを念入りに洗う上司...「生理的に嫌われる」とはこういうことか

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ひろえもん
性別:女性
年齢:58
プロフィール:ネコ3匹と夫と海辺の街でどうにかこうにか暮らしている関西のおばちゃんです。

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10年以上前、私(当時40代後半)はヨーロッパの穏やかなお役所のアシスタントから、物流の営業アシスタントに転職しました。

そこでの私の先輩は、その業界ではバリバリのベテランで、仕事のできる日本人女性。

畑違いの仕事な上、ドンくさい私は、瞬く間に彼女の目の上のタンコブになったようです。

その会社では、日本の営業との連絡は英語によるメールです。

メールは現地の航空機手配、陸上輸送、税関担当等宛てにCCで同時に共有され、契約締結と同時に全員が仕事に取りかかれる仕組みになっています。

メールを書くときは辞書などを引いてる時間もなく、すぐに返事を返すのですが、背後には彼女が腕組みをして立っています。

英文を1行書くたびに「クスッ」と笑う声がして「やりにく〜っ!」と思っていました。

こんなショッキングなこともありました。

彼女から説明を受けていたとき、私は机の上にあった彼女のボールペンを自分のものと勘違いし、口の辺りに当ててしまいました。

すると、彼女は「やめてくださいっ!」と叫んでトイレに走って行きました。

そして、洗ったボールペンをタオルで念入りに拭きながら戻ってきたのです。

それを見た私は「生理的に嫌われるとはこういうことか」と思いました。

毎日が地獄で、帰りのバス停まで来ると自然に涙が溢れて...なんて日々が続きました。

同僚たちは車でバス停前を通り、私がいることに気づくと「駅まで乗ってく?」と聞いてくれるのに対し、彼女はコチラをチラッと見て、あからさまに四駆のアクセルを踏み込むのも心が痛みました。

ただ、別の日本人の先輩や現地人の同僚に助けられ、どうにか仕事は続けられました。

私もつらかったけれど、彼女も相当、つらかったのだと思います。

精神的なものかアレルギーなのか分かりませんが、彼女は顔中が発疹だらけになった時もありました。

自分がデキるだけに、デキない人間に対する怒りが極限に達していたんだと思います。

そんなある日のことです。

日本にいる両親が亡くなりました。

姉から「何も分からんから早く帰って!」と連絡があり、直ちに帰国することに。

姉は両親の仕送りで生活していた割には通帳や印鑑の所在も知らず、葬式代も出せないとのこと。

さらに、実印が何かも知らないと言います。

これでは遺産分割協議や税金などを教えるのに時間を要すると考え、上司に辞意を申し出ました。

現地人の社長が「落ち着いたらまたうちで働けば?」と言ってくれたのですが、「2カ月はかかるので」とお断りしました。

そのとき、隣にいた人事から「嘘つかなくていいのよ。あなたが初めてじゃないの!」と言われてピンときました。

私の前任も前々任も彼女(上司)に苦労していたようで、私もイジメで辞めると思われたようです。

私は「本当に両親が亡くなったんです!」と伝えました。

それを信じてくれた社長は「残りの有給使って早く帰りなさい」と言ってくれたのですが、日本人男性の上司からは「直属に許可なく退職を早めるなんて社会人として常識ない!」と怒られて「ご愁傷様」のひと言もありませんでした。

完全にイジメで辞めたと思われていたようです。

葬式に間に合うように乗った帰国便の中で、窓の外に浮かぶ雲を眺めながら、ため息と涙が交互に流れ出たことを思い出します。

ずっと後になって欧州に戻ったとき、優しかった先輩と私の後任になった人と飲みに行きました。

例の先輩の厳しさは変わっていないようで、後任が「1年は耐えられるけどそれ以上はちょっと...」と笑っていてホっとしてしまいました。

その後、彼女の下には1年のワーキングホリデーの方を「1年のみ働く」ことを条件して雇うようになったそうです。

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