「お調子者の子犬」に運命を感じ、家族として迎えて。特別な縁を感じていたけれど... あれ?

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:飼っていた犬を亡くしてから1年半、特に新しい犬が欲しかったわけではなかったのですが、やられてしまいました。

「お調子者の子犬」に運命を感じ、家族として迎えて。特別な縁を感じていたけれど... あれ? 47.jpg

2021年の1月に、17年間暮らしていたユキという犬を亡くしました。

生まれたばかりのところをもらってきて、家族のように過ごしていたので喪失感は大きく、妻(58歳)との間でもなんとなく犬の話題は避けていました。

「ねえ、あれ...すごくない?」

2022年の8月初め、妻と一緒に大きな街に買い物に出かけたとき、あるペットショップの前で妻が気づきました。

そのショーウィンドウでは、一匹の子犬が私たちのほうを見て、激しく尾を振りながら立ち上がっていたのです。

「うん、すごい勢いだね、お腹が空いてるのかな?」

黒柴の子犬で、まだ生まれて間もないであろう大きさでした。

しばらく立ち止まっていましたが、その間ずっと立ち上がってガラスにへばりついていました。

「あの犬、かわいかったよねえ...」

家に帰ってからも妻が思い出しながらつぶやきました。

「そうだね、かわいかった」

犬の話題は久しぶりで、尾の振り方がすごかったとか、よほどやんちゃな犬に違いないとか、なんとなく盛り上がりましたが、深く話すことはしませんでした。

それから1週間ほどたって、また買い物に出た折に、同じペットショップの前を通りかかりました。

「ちょっと、見て!」

妻に言われて目線をやると、先日と同じ黒柴の子犬が、また立ち上がってこちらを見ながら激しく尾を振っていました。

「覚えてるのよ、私たちのこと」

妻はうれしそうに言いましたが、私は誰にでもそんなふうにしているに違いないと思っていました。

でも、なんとなく縁のようなものを感じて、近づいてガラス越しにちょっかいを出していたところに、ペットショップの方が声をかけてきました。

「やんちゃ坊主でね、いつもハイテンションなんで残っちゃって」

頭をかきながら、少し呆れたような口ぶりでした。

「いやあ、こないだも通りかかったときに、立ち上がって尻尾を振ってたもんで、気になっちゃって」

子犬を見ながら返事をしました。

「え? あれ、ホントだ、立ち上がってる...こんなふうにするのは見たことなかったなあ」

ペットショップの方が珍しいものを見るような表情で、子犬のショーウィンドウを覗き込みました。

私たちにしかこの姿は見せないってこと? 妻と顔を見合わせてしまいました。

「...あの、ちょっと...抱っこしてみてもいいですか?」

ケージから出されて、妻の膝の上に来た子犬はうそのように大人しく収まりました。

「おや、やんちゃ坊主がどうしたんだ...いつもはバタついて大変なんですけどね」

いよいよ運命めいたものを感じて、その場で飼う決意してしまいました。

前の犬のようにぜひ長生きしてもらいたいということで、双子のご長寿姉妹にあやかって「きんぎん」と名付けようとしました。

「でもさあ、見事なまろ眉なのよね...まろ、も良くない?」

結局、この2つをミックスして「きぎまろ」と名付けました。

「新しい家族だ、よろしくな、きぎまろ」

するとうれしそうに立ち上がって、尾を振る決めポーズで返事をしてくれました。

ところが数日たって、宅配の荷物が届いたときのことです。

「ハンコ、お願いします...おや、かわいい犬ですね、立ち上がっちゃって」

宅配の方の言葉に驚いて振り返ると、そこには立ち上がって尾を振る決めポーズのきぎまろが!

どうやらペットショップの方のセールストークにのせられたような気がします。

でも、きぎまろがかわいいことは変わりません。

それもまあ良しとするか、と思い直しました。

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