<この体験記を書いた人>
ペンネーム:夏子
性別:女性
年齢:45
プロフィール:同じ年の夫と私、子どもの3人で郊外の住宅街に住んでいる主婦です。毎日のんびり近所の公園を散歩して癒されています。
私が27歳のとき、実家が引っ越しすることになりました。
そのころ私は正社員で収入も安定していましたが、通勤に便利だったので実家暮らしのまま。
実家が引っ越しするタイミングで一人暮らしを始めても良かったのですが、引っ越し先も通勤に便利な場所だったので一緒についていくことにしました。
当時、私は趣味で油絵を習っていました。
油絵教室は週1回、先生は年齢不詳な感じの男性です。
通っていた曜日は他に生徒がいなくて2人きりでしたが、教え方が上手く気さくな人なので楽しく通っていました。
レッスン中はいつも雑談しているので、世間話の感覚で先生に引っ越しすることを話しました。
すると、先生は言います。
「僕はね、占いができるんだよ。引っ越しは方角やタイミングなんかで運勢が変わるから占ってあげよう」
そんなことを言い出したのですが、引っ越し先はもう決まっていますし、今さら占ってもらい、嫌な結果が出ても中止できません。
そもそも引っ越しに関して決定権を持っているのは両親で、私には決める権利がないのです。
「いや~、ありがたいんですが、うちの親は占いとか信じないタイプなので」
そう断ったのですが翌週、先生は妙に深刻な顔をして、絵の道具ではなく風呂敷包みを抱えて現れました。
「引っ越しはやめたほうがいいよ」
私の顔を見るなり不吉な一言。
占いの結果、タイミングも方角も最悪だったらしいのです。
「引っ越しなんかしたら一家離散して悲惨なことになるよ! 破産しちゃうかもよ!」
本気で心配している様子なので、理由を聞いてみたところ、先生は風呂敷包みの中に入っていた占いの本や道具を出して説明を始めました。
「僕はね、正確に占うために、いつも本を見ながら占っているんだ。この本を見てごらん」
結局、その日のレッスンは絵を描かずに占いの説明で時間切れ。
2時間の話を聞いて、先生は油絵を教えるのは上手いけれど、占いの説明は下手だということが分かりました。
私の家と先生の家は途中まで同じ沿線だったので、レッスン後はいつも一緒に電車に乗って帰っていました。
先生の占いの話は電車に乗っても止まりません。
しかも、私が降りる駅が近づいてくると、すごいことを言い出したのです。
「僕、今から一緒に君の家に行くよ。ご両親に引っ越しをやめるように僕から話してあげよう」
両親は絵の先生に会ったことがありません。
夜の9時過ぎに初対面の先生が占いの話をするために訪問してきたら、きっと驚くでしょう。
「もう遅いですし、そもそも引っ越しは決まったことなので」
断りましたが、先生は電車を降りて改札口までついてきました。
「話をしに行く」
「結構です」
30分くらい押し問答をしたでしょうか。
「不幸になっちゃうよ! 今なら間に合うんだよ」
ようやくあきらめたのか、先生はそう言い残して帰ってくれました。
今にして思うと、先生は無邪気で悪気がない人なので、本気で心配して両親を説得しようとしてくれたのでしょう。
ただ、当時の私は人生経験が浅かったので、この件で教室で先生と2人きりになるのが怖くなってしまいました。
結局、理由をつけて2回ほどお休みすることにしました。
すると、他の女性の生徒さん(20代)から「先生に頼まれた」と電話をいただき、引っ越しの件について質問されました。
執着のようなものを感じて私は怯えてしまい、その後は先生にお会いすることなく電話で教室を辞めるとお伝えしました。
私も含めて油絵教室の生徒はみな教室以外でも先生と会っていて、一緒にスケッチや絵の展覧会などによく出かけていました。
とても楽しく通っていたので、そのような辞め方をして今でも残念に思っています。
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