「絵を描いてくれる?」その一言で分かり合えた親友との約束

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:みわちゃん
性別:女性
年齢:61
プロフィール:男女で親友ってある? と言うけれど、かけがえのない男性の親友と、もう40年近いつきあいです。

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「絵を描いてくれる?」

「お~、よかったなぁ。おめでとう」

37年前、私(当時24歳)は結婚を決めたとき、K君に電話をしました。

K君は同じ町に生まれ、同じ小学校、中学校に通い、中学3年生のときは同じクラスでした。

いつも登下校は一緒で、学校ではカップルに見られていたようですが、お互いの恋愛の悩みなども話せる親友でした。

「俺が結婚するときはピアノを弾いてくれよな」

「じゃあ、私が結婚するときは絵を描いてね」

当時、そんな約束をしていました。

私は当時、音楽高校に行く勉強をしていました。

一方、K君はとびっきり絵が上手で、鉛筆一本あれば、さらさらっと特徴を捉えた同級生の似顔絵のできあがり。

そんなK君は美術科のある高校に進みました。

高校生のときに展覧会を見に行ったら、K君は全裸の女性の絵を描いていました。

「えっ、こんな絵も描くようになったの?」

どこか大人びた目を持ち始めたK君に、私は戸惑いを隠せませんでした。

それからも何度かK君の絵を見に行きました。

「あら、穏やかで幸せそう」と感じることもあれば「うわぁ、めちゃ暗いけど大丈夫?」と感じることも。

K君の絵を見ると、そのときの彼の状況や心理状態が分かる気がしました。

その後、K君は美術大学に進みましたが、お互いに忙しく、心のどこかで「元気でいるかなぁ」と思いながらも連絡を取ることはありませんでした。

しばらくして、K君は地元に戻って中学校の美術の先生になりました。

学校生活に振り回されて心も体も消耗し、ゆっくりとキャンパスに向かう時間もなく、いつの間にか絵を描くことを忘れてしまったそうです。

いろいろなことがあり、K君のほうが先に結婚をしました。

もちろん、結婚式で私はピアノを弾きました。

そして、私が結婚することになり絵を描いてもらったとき、K君はこう言ってくれました。

「ありがとうな。俺は長い間、絵を描くことも絵と向き合うことも忘れていたんだよ。お前のおかげで、また絵を描き始めることができたよ」

そのときの絵はずーっと私の家のピアノの置いてある部屋に飾られています。

ところがところが...今頃になってK君が「あの絵はあまりにも俺としては情けない」と言い出しました。

「じゃあ結婚40年になったとき、また絵を描いてくれる?」

「いいよ。今度はもう少しましになるかもな」

なんて言っていたK君ですが、現在の家族の写真を見せたら...。

「おぅ。あんまり期待しなさんな」

どうやらプレッシャーを感じてしまったようです。

どんな絵でもいいよ、かけがえのない親友が描いてくれたら大切な宝物だもの。

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