<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ぴち
性別:男性
年齢:52
プロフィール:お汁粉を受け付けられなくなったエピソードを持つ52歳です。
私(当時35歳)がお世話になっていた会社の社長(62歳)は、幼い頃にとても貧しい思いをされた方でした。
なぜそのようなことになったのかは定かではありませんが、特に食べ物についてご苦労があったようです。
そのため、日頃から事あるごとに「もったいない」と言い、物を大切にしていました。
物を大切に扱う社長の姿勢には見習うべき点が多く、また、たくさんのことを学ばせていただいていました。
とても寒い冬のある日のことです。
15時近くに突然社長から連絡が入りました。
「お汁粉を作ったから、食堂に食べに来なさい」
同じ建物内で勤務していた私は、体育会系男子で食べることが大好きな後輩のB(25歳)を連れて、食堂に向かいました。
食堂にいたのは、社長と数名の女性事務員さん。
エプロンを付けた社長の前には、炊き出しで使うようなとても大きな寸胴鍋がありました。
事務員さんたちはすでにお汁粉を堪能した様子です。
事務員さんたちは社長に「ごちそうさまです」「とてもおいしかったです」と感謝を伝えています。
社長もとてもうれしそうな表情をしていました。
もちろん、私とBもお汁粉をいただきました。
かつてお腹いっぱい食べることができなかったせいか、社長は私たちのような若い世代の人にはたくさん食べて欲しいし、お腹いっぱい食べている姿を見るのがとても嬉しいんだと話してくれました。
しかしこの時、私とBには一つの懸念がありました。
それは、この日に限ってお昼を取った時間が遅かったことです。
ほんの1時間前に昼食を終えたばかりの私たちは、正直お腹がいっぱいの状態でした。
しかし、甘いものは別腹、と言います。
私もBも甘いものは大好きなので、早速社長のお汁粉をいただきました。
濃厚な食感と甘すぎない味、白玉団子もおいしくいただき、あっさりと完食した私とB。
「やっぱり男の子は食べっぷりがいいねぇ。見ていて気持ちがいいねぇ」と言いながら、社長は私たちのお椀を取り、2杯目を注いで下さいました。
2杯目を食べ終えた頃には別腹も満タンになった私たち。
気づけば事務員さんたちはいつの間にか持ち場に戻っていたようで、食堂には社長と私、そしてBの3人だけです。
社長は3杯目を注ごうとしたので「もうお腹パンパンです」と3杯目の辞退をお願いしたら、
「食べ物を粗末にしてはいけないよ!」との一言。
どう言って断ればいいのか分からなかった私たちは、それぞれ5杯ずつお汁粉をいただくこととなったのです。
社員のためにわざわざお汁粉を作ってくれる優しい社長。
人や物をとても大事にしてくださり、学ぶところがとても多い社長。
尊敬に値する社長なのですが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」のようです。
その日以降、私はお汁粉を口にしていません。
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