<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男性
年齢:54
プロフィール:コロナ禍が始まって以来、風邪一つひかずにがんばっております。何とかこのまま逃げ切りたいこの頃です。
私が10年前に勤めていた会社での話です。
私より一つ上の社長は、新事業を始めるにあたり、加盟したフランチャイズの新店舗の責任者として私を雇いました。
社長のオフィスには、フリーランスでの売上に対する数々の賞状やトロフィーが飾ってあり、彼が有能なビジネスマンであることは確かなようでした。
それまで営業や売上に関わったことがなかった私は、この人から学べることは全て学ぶつもりでした。
実際に結果を出している人間はどこか違うはずですし、今後の自分のためになると思ったからです。
しかし「どこか違う」は、悪い意味で当たっていました。
まず、入社して一週間もしないうちに社長の口調が変わりました。
呼び捨てにされて上下関係も強調され、私は早くも騙された気持ちになりました。
購入したてのパソコンを持って、社長が私の支店に来たときのことです。
「インターネットの契約と接続をその日のうちに済ませろ」との指示に、「一般的にネットの接続はそんなに早くできないのでは」と答えると、途端に機嫌が悪くなりました。
「あほか、買ってすぐ使いたいのが当たり前やろ」
プロバイダーに電話するよう指示され、私はとりあえず従いました。
やはり申し込み後、所定の工事など済んだ上での使用開始、との説明を受けました。
それを社長に伝えると、気が狂ったように激怒して受話器をひったくりました。
「何でそんなに時間がかかるんや!」
「買ってきてすぐ使えないなんてあほやろ!」
「なあ、本当はいけるんやろ」
オフィスに怒号と罵声が響き渡りました。
そして約30分後、ついに彼は電話を切りました。
「今日から使えるようになるわ。な、お前もしっかりせなあかんで」
恫喝の末、強引に話をつけたようです。
あまりのことに開いた口が塞がりませんでした。
折り込みチラシの制作時も酷いものでした。
校正を重ねて完璧を目指すのはもっともだと思いますが、業者に対する横暴な態度は誠に恥ずべきものでした。
原案の提出期限が翌日に迫り、私が最終確認をすると驚きの答えが返ってきました。
「締め切りなんてほんまはどないでもなる。延ばせ」
業界の常識に無知な私は、愚かにもそんなものかと思ってしまい、ごく気軽に担当者に締め切りの延長をお願いしました。
やんわりお断りされ、私は社長の指示通り言ってしまいました。
「締め切りは一応ということではないのでしょうか」
担当者の声が変わりました。
「もしかして、それは社長がおっしゃってるのですか」
私は「はい」とは言いませんでしたが、一瞬の沈黙が全てを伝えました。
しばらく息をのんだ彼は、言いにくそうに口を開きました。
「お立場は大変かと思いますが、守っていただかなければ困るんです」
そう言った後、丁寧に理由を説明してくれました。
確かに自分の業務で顧客から同じことをされたら大変困ることに気付き、汗が出ました。
「今回だけは上と相談して特別に延ばしますので...」
相手も私の立場を心配したのか、無理を要求をのんでくれました。
後から知りましたが、社長は言わば「関わってはいけない人間」として、あちこちで要注意人物に指定されていたようです。
そんな人間側の下僕として無茶を言った私は、本当に情けない気持ちになりました。
しかし、社長の横暴も長くは続きませんでした。
事業を広げようと社員を増やしましたが、誰も定着しなかったのです。
面白いように退職が続き、我慢の限界に達した私が退職届を出してゲームオーバーとなりました。
5店舗まで拡張した事業は人手が足りなくなり、掛け持ちも限界。
ついに社長自ら現場に出る羽目になりました。
そんな無茶は長くは続かず、程なく3店舗は手放さざるを得なくなり、事業を縮小することに。
営業の腕より人間性、とつくづく感じた出来事でした。
人気記事:《漫画》給食室で「触るな」と言われた謎の箱...栄養士が隠していたあり得ない行為とは!?<前編>
人気記事:《漫画》月2万円渡して「残ったら君のお小遣い♪」ってアホか! 波乱すぎる娘と彼氏の初同棲<前編>
人気記事:「これは要らんやろ。贅沢や!」お金のない結婚生活...買い物カゴを夫がチェックする日々《かづ》
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。