<この体験記を書いた人>
ペンネーム:こたつの上の猫
性別:女性
年齢:50
プロフィール:50歳の主婦で在宅ワーカー。朝から晩まで仕事場にいるSEの夫と習い事で忙しい高校生の娘の3人家族です。
53歳の夫、15歳の娘と3人で暮らしています。
一人娘は超がつくパパっ子です。
赤ちゃんの頃からずっと、情熱的に感情豊かに夫に接します。
私がオムツを替えていても私には見向きもせず、頭の上側にいる夫のほうをずっとニコニコして見ているような子でした。
どんなに私が娘に優しく接しても、楽しく過ごせるように話を盛り上げても、身の回りのお世話をしても、娘が夫に示すような愛情いっぱいの笑顔や好意は向けてもらえません。
娘本人は「パパもママも両方大好きだよ!」と言ってくれるのですが、明らかに反応が異なります。
自然に湧き出てくる隠しようのない笑顔は夫限定で、私といるときの娘は穏やかでクールです。
むしろ、機嫌の悪いときは残酷なほど私を無視して返事をしなかったり、いない者として扱ったり、ときには「うるさいなあ! あっち行っててよ!」と吐き捨てることもあります。
娘が大好きな私は、母としての寂しさが年々身に染みるようになってきました。
塾や習い事の送り迎えをしたり、毎朝お弁当を作ったりしているのは夫ではなく私なのに...。
報われない気持ちが募り、ある日とうとう、悲しさ虚しさがあふれて無気力になってしまいました。
50歳になり体調不良や頭痛が続き、五十肩が痛む不自由な身体で家事をしていることも追い打ちになったのかもしれません。
何かに失敗してしょぼんとする気持ちになったり、自分のバカさに自己嫌悪したりするなんてよくあることですが、これほど深く重く、悲しいとか虚しい気持ちに体中を支配されて落ち込む経験は初めてでした。
私の口数が減り、料理をする意欲がなくなり、食事がカレーやシチューなど簡単にできる料理が1週間続いたときもありました。
すると、私のことにはかなり鈍い娘が朝起きてきて、「お母さん調子悪い? 疲れてる? なんだか元気ないよ?」と声をかけてくれました。
「うん、まあ、ちょっと。大丈夫よ。でも、今日の朝ごはんは適当に納豆と白ご飯と即席のお味噌汁でも食べてくれる? お母さん、もう少しだけ寝るね。行ってらっしゃい」
あまり心配をかけたくはないので、そう言って寝室に引き返し、その日はぐったりと1日中寝込みました。
目を覚ますと夜の7時でした。
よほど自分は疲れていたのかな、と思いつつ部屋から出ると、部屋の様子が変わっていました。
テーブルの上に清楚な白のスイートピーと爽やかな紫のスターチス、カスミソウの小ぶりな花束が生けてあり、物が乱雑に置かれていた場所はすっきりと片づけられています。
そして、ソファの上に山積みにしていた洗濯物はきれいに畳まれており、台所からはカレーのにおいがしていました。
テーブルの上には書置きがあり、「今日は1人で塾に行ってきます。バスで行くので大丈夫。ゆっくりしてて。カレー食べてね」と書かれていました。
娘が私を起こさずにこれを全部してくれたんだ、と理解した瞬間にどっと涙があふれました。
グーッと胸に迫る気持ちに熱く体中が火照り、あの娘が、あの子が、とぼたぼた涙を落としながら台所のカレーを見に行きました。
皿やスプーンが用意され、調理後のくずや調理器具が片付けられたキッチンを見て、またわ~っと感動が押し寄せて泣いてしまい、顔も着ていたシャツもぐちゃぐちゃになる有様でした。
帰宅した娘をギューッと抱きしめてありがとう、嬉しい、を連発した私。
照れた表情を見せる娘がやはり可愛く愛しく、子の愛情を感じることができ、自分は幸せ者だと実感したのでした。
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