【父母の愛】押し入れで見つけた「黒い箱」の中身は...。母が教えてくれた、亡き父との思い出と愛の逸話

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ぴち
性別:男性
年齢:52
プロフィール:思い出の詰まった品はお金を積まれても手放すことはできないと思う52歳。

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今から40年ほど前、まだ私が中学生だった頃、押入れの奥から見たことのない黒い小箱を見つけました。

箱のふたを開けると中には、中学生だった私にも高価だろうと分かるほど、立派な紳士用の腕時計がありました。

母(当時35歳)にそれを見せると、それは生前父が大切にしていた、とても高価な時計だといいます。

そして、母はその時計についての思い出話をしてくれたのです。

父は、勤めていた会社を辞め、独立起業した人でした。

サラリーマン時代に培った人脈や経験を活かし、父のビジネスは好調なスタートを切ります。

おかげで、事業も家庭もとても安定していたと母は話してくれました。

おかしくなったのは、創業から2年ぐらい後、父の会社のお金が、ごっそり盗まれたそうです。

「盗まれたお金は返ってきたの?」と母に尋ねると、その質問に母は答えませんでした。

きっと返ってこなかったのでしょう。

そのことがあったせいで安定していた生活は一変、不安定なものへと変化しました。

父と母が子どもには悟らせまいとしてくれたためか、そんな苦労があったことなど、全く思いもしませんでした。

それでも資金繰りが難しくなった時、父はその高価な腕時計を質屋に売ったのだといいます。

時計は高額な値が付き、そのお金を元手に何とか生活を立て直すことができましたが、事業の方まではお金を回すことができず、父は会社をたたみ、再度就職することになったそうです。

その翌年の父の誕生日。

母は父のためにプレゼントを用意していました。

父がプレゼントの包みを開けると、そこには見覚えのある黒い箱があったのです。

箱を開けると、そこには父がとても大切にしていた、あの腕時計がありました。

父はとても喜び、感動したそうです。

母は、父の腕に時計がないことに気づき、もしやと思い質屋に向かったそうです。

父の時計を見つけた母は、時計を買い戻すため、お金になりそうな自分の持ち物をまとめて質屋に持ち込み、父の時計を買い戻したのだといいます。

それから半年後、父は事故で他界しました。

私がまだ5歳になったばかりの事でした。

あれから7年かぁ、とそのとき母は言いました。

「お父さんが亡くなったとき、この時計を売って生活費にしようとは考えなかったの?」と尋ねると、母はこう答えました。

「お父さんの形見だからね、売れないよ」

そう言った母が少しだけ笑ったことを今でも覚えています。

腕時計は、もう腕時計としての機能を果たしていません。

それでも、父と母が大切にした腕時計です。

かつては高価な価値がつけられた時計ですが、今では動かないことからも二束三文、あるいは買い取ってすらもらえないでしょう。

それでも、私たち家族にとっては思い出の品です。

これからも大切に、黒い箱にしまっておきます。

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