<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:地方都市のそのまた外れの地区に住み始めて25年以上になりますが、どうしても馴染めない「伝統行事」があります。
妻(57歳)と結婚し、義実家からいわゆる「味噌汁のさめない距離」に居を構えて26年目に入りました。
決して便利とは言えない場所ながら、豊かな自然に囲まれ(イノシシなんかも出るのは少々余計ですが)けっこう気に入っています。
ある「伝統行事」を除いては...。
「何だこりゃ? 移動総会? 参加希望って...」
最初に案内が来たのは、地区に来て間もない頃の回覧板でした。
何やら時代がかった案内文は正直よく分からず、せっかくの休日に「希望」してまで参加するつもりにはなりませんでした。
「不参加の場合は理由を明記」と書かれているのを見つけて、まあ適当でいいか、と「所用のため」と記入して回しました。
数日たつと地区の役員さんから電話がありました。
「所用って、どうしてもその日じゃないと駄目なのかい?」
なかなかのプライバシー侵害ですが、来たばかりの地区で波風を立てたくありません。
「いやあ、職場の付き合いなんですよね」
そうお茶を濁しました。
すると今度は、役員さんが直接家を訪ねてきました。
「来て最初の移動総会に行かないのはよろしくないよ。顔見せの意味もあるんだから...」
「はあ、そんなに大事なんですか、この移動総会って...」
「大事っていうか、楽しいんだよ。みんな集まるから地区に馴染むのにもいい機会だよ」
なんだか断り続けるのも面倒になって、参加する、と返事してしまいました。
「移動総会」は要するに春はお花見、秋はバーベキューで盛り上がろうという行事でした。
「総会」とは名ばかりで、ただ飲み食いするだけの集まりです。
貸し切りバスを仕立てて、車内では昼間から、それも発車と同時に酒盛りが始まりました。
このときは花見だったので、どうせなら着いてから花の下でやればいいのに、と思いながら、あまりお酒に強くない私は離れた座席で息をひそめていました。
会場に着く頃には、みなさんすっかり出来上がっていて敷物も敷けない有様でした。
それでもなんとなく宴席が始まると、また飲み始めるのには感心しましたが。
その後もこの伝統行事は律儀に続けられ、移動の車の中から宴会が始まります。
酒に弱い私は、車内で飲んだらすぐにダウンしてしまうため、そのたびに車の中では小さくなっていました。
そうすると、参加者のみなさんが赤ら顔で迫ってきて...。
「付き合いが悪い」
「これだからよそから来た人は...」
そんな嫌味が続くのを苦笑いでかわし続けます。
数年参加したので、かわし方だけは上手くなってしまいました。
実際いまだによそ者扱いされるので、この伝統行事も断りきれないのですが、この2年ほどはコロナのおかげで行われずにすんでいます。
今年も移動総会(つまり花見)は「残念ながら中止の運びと相成り...」との回覧が回ってきて胸をなでおろしました。
正直この行事に関しては、コロナ禍が終わっても「残念ながら中止の運び」になってもらいたいなあと思ってしまいました。
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