<この体験記を書いた人>
ペンネーム:トムワリ
性別:男性
年齢:60
プロフィール:無職の身体障害者(右半身麻痺、左下肢麻痺。構音障害で会話ができない状態)です。
15年前に脳梗塞、8年前に脳出血を患い、右半身麻痺、左下肢麻痺、構音障害(会話ができない、飲み込みが上手くできない)が残っています。
大学を卒業して、一般就労して普通に働いていましたが、入社して3年目に商売をしていた父親が突然倒れました。
脳梗塞でした。
何とか一命は取り留めましたが、このまま寝たきり状態になるとお医者様に言われ、家族みんな落ち込みました。
父は手広く商売をしており、その当時はお好み焼き店4店舗を経営する代表取締役社長として働いていたので、今後お店はどうしようかと途方にくれました。
母、姉だけではとても難しいということで、私が会社を辞めて商売を継ぐことになりました。
一応、立場上4店舗見なくてはいけないので、朝4時から夜中の1時まで必死に働きました。
いろいろありましたが3年ほどで何とか落ち着いてきたので、会社員時代に付き合っていた妻と結婚しました。
有り難いことに妻も一生懸命に商売を手伝ってくれて、朝4時からの市場の仕入れにも行ってくれました。
夜もお店を手伝ってくれて、終わるのはいつも12時くらい。
そんな状態でしたので、子どもができたのは結婚して7年後でした。
それからも子育てしながらお互いによく頑張り、仕事は相変わらず忙しかったものの2人目も生まれ、日々幸せに暮らしていました。
家が飲食店をしていると、どうしても手の足らないときや急に忙しくなったときは、子どもに手伝ってもらうことがあります。
「明日から試験やねん」
「普段から勉強していれば大丈夫」
「今日は友だちと遊びに行く」
「お店に連れてきて遊べば」
なんて好き勝手に言って従わせていました。
そんなこんなで息子たちも大きくなり、長男は彼女とお店を手伝ってくれることもありました。
まぁ、この子と結婚するのかな、愛想もいいしかわいいしと喜んでいました。
ところが、長男が高校卒業を控えて、「卒業したらほかの会社で働く」と言い出したのです。
「え~、なんでや」とびっくりしましたが、長男の言い分にショックを受けました。
「商売を継ぎたくない。縛られたくない。自由になりたい」
無理やり「商売を継げ」とも言えないし、長男の言うことを認めました。
それからは妻を含め家庭の雰囲気が暗くなりました。
子どもが小さいときは、夏は大型テーマパークや海外旅行、冬は北海道スキーへと連れていくこともありましたが、子どもたちはそれが愛情とは思っていなかったようです。
普段から商売を手伝わせているので、休めるときは思いっきり贅沢して家族に喜んでもらおうと思っていたのですが、子どもたちにしてみると違ったのです。
きっと、家族への愛情は楽しいことやものを与えるだけではありません。
普段の生活の中に、もっと大切なものがあったのだと今さらながら後悔しています。
長男は高校を卒業して1年ほどしてから、本当に家を出ていきました。
もっと話し合えばよかったと思いますが、お互い気まずくて顔も合わせませんでした。
妻と次男は長男と連絡を取り合ってるみたいですが、何も教えてくれません。
結局、商売は廃業しました。
30年ほど続いたお店でしたが妻も疲れてしまい、次男もロボットを作りたいと商売を継いでくれませんでした。
そんな日々の中、つい先日、長男から妻と次男宛てに年賀状が届きました。
そこには見たこともない女性と赤ちゃんが微笑んでいました。
結婚しただけでなく赤ちゃんが生まれてたんや...心底ビックリしました。
赤ちゃんどころか、息子の妻になった女性を見たのも初めてです。
手紙は九州からで、私の家からは大変遠いところです。
コロナのことを考えれば、会いに行きたくてもそう簡単には行けません。
なにより今の私の健康状態では、遠出は難しいです。
でも、初孫なので一目会ってみたいし、抱っこもしてみたい気持ちが強いので、行く気は満々です。
昔から初孫は目に入れても痛くないほどかわいいと言われています。
必ず会いたいです。
願わくば、長男と奥さんと赤ちゃんみんなで会いに来てほしいです。
私と長男の間にはあのときから時が止まっています。
再び動き出すにはもう少し時間がかかるのかなぁ。
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