<この体験記を書いた人>
ペンネーム:yumekafu
性別:女性
年齢:64
プロフィール:両親の介護のため、行員の仕事を途中退職し、現在カウンセリング&ヒーリングの仕事を楽しんでいます。
今から8年ほど前、認知症の実母(当時90歳)に異変が起こりました。
夜なかなか寝付けなくなって、小さな子どものように「お母さん! お母さん!」と呼ぶようになりました。
誰かがそばに行って「大丈夫だよ」と声をかけるとしばらく落ち着くのですが、そばを離れるとすぐに「お母さん!」と呼ぶのです。
私(当時56歳)は両親の実家の隣に住んでいて、家と実家を行ったり来たりしながら介護をしていました。
ただ、仕事もしていたので、ずっと母についているわけにもいきません。
夜も様子を見に行くのですが、「お母さん!」という声が聞こえると「起きているんだ」と気が滅入ってしまいました。
さらに、大きな声で叫んだり、ぶつぶつ独り言を言ったりすることも増えてきて、夜中2時3時頃にやっと眠り始め、朝は起きることができなくて、朝食を摂れない日が増えました。
その頃から母の性格が変わり始めました。
それまでは何があっても怒ることがなく、誰に対しても優しくて、いつもニコニコして「うんうん」と話を聞いてくれる母でした。
わがままを言ったり怒ったりする母を見たことがありません。
私はそんな母が大好きだったので、介護をすることも苦ではありませんでした。
ですが、どんどんわがままになり、気にいらないことがあるとすぐに怒りだして、ヘルパーさんたちの言うことも聞かなくなってしまいました。
今までの母とは真逆の性格になってしまったのです。
私はそんな母にイライラが募り、母のことが嫌になって、母の部屋に行くのが憂鬱になってしまいました。
ある日の朝方、母の様子を見に行くと、いつものように「お母さん、お母さん、助けて!」と叫んでいます。
私は「またか」と思いながら「大丈夫だよ、みんないるから」と繰り返すのですが、母は私の言葉が耳に入らないようで叫ぶばかりです。
とうとう私の怒りが爆発してしまいました。
「もううるさい! 黙って!」
そう母を怒鳴りつけて、そばにあったティッシュペーパーの箱を思いきり床に投げつけたのです。
大きな音がしたのですが、それでも母は気づく様子もなく「お母さん! お母さん!」と叫び続けていました。
私はなんだか悲しくなり泣き出してしまいました。
その日、私は自分のことが情けなく、自己嫌悪に陥ってしまいました。
母に対してこんなに怒りを爆発させるなんて思ってもいなかったのです。
次の日、私はこのことを母のケアマネージャーさんに話しました。
そのときのケアマネさんのアドバイスは、今も心に残っています。
「お母さんが変わってしまったことはなかなか受け入れられないと思いますが、できるだけ今のお母さんを認めて、『そうだね』と言ってあげるといいですよ」
私は、ケアマネさんに思いを吐き出したことで気持ちが楽になり、少しずつですが、今の母を受け入れようと思えるようになりました。
そして、母がどんなことを言っても「そうだね」と肯定するようにしました。
その効果があったのかどうかは分かりませんが、母が夜に叫ぶことが少なくなり、眠りにつくのも少しずつ早くなりました。
わがままや怒りっぽいのは変わりませんでしたが、それも母が子ども返りしたと思うとかわいくも感じて、前よりも楽に対応できるようになりました。
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