性別:女
年齢:55
プロフィール:近居の姑と同居の実父はともに認知症。嫁と娘の二つの立場で、それぞれの生活を手助けする介護人(かいごびと)です。
※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。
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義母は要介護5で寝たきりです。今、週末は義弟が暮らす実家、週の中日は我が家、それ以外は小規模多機能住宅と3カ所を回りながら生活しています。夫の実家と我が家は車で10分もかからない位置関係。夫には実家で暮らす弟の他に2人の弟がいます。みんな電車で1時間もかからない場所に住み、一月に1度は実家に顔をだしてくれています。
3年前に義母の認知症の症状がひどくなったことを機に、私の本格的な介護生活が始まりました。その時の夫は「(認知症は)素人には無理。介護はアウトソーシングするべき」とはなから非協力的。なので、私が義母の話をすると夫には愚痴に聞こえるようで「だから無理だと言ったんだ!」と怒鳴られます。
その頃の義母は要介護2。食事や排泄は自分でできていても、感覚で生きているようなところがありましたから、料理は見た目が良くないと食べてもらえないし、排泄も自分で出たという意識がなければそのままです。寝たきりの今よりずっと手がかかりましたが、夫には事実を告げることすらはばかれたのです。
義母のお世話を毎日するうち、私はいつしか義弟のセーフティネットにもなり、それまでの解放されていた週末でさえも頼られることがありました。週末くらい誰かに代わってもらいたくても、私には義母のことを直接お願いできる人は夫以外にはいません。GWやお盆休みだけでなく、平日も休暇を取って旅行に出かけたりする夫や弟たちの姿に接し「この人は一体誰の親なんだ」と理不尽な思いを積み重ねながら義母のお世話です。
夫は私が大変なのも垣間見ていたはずなのに、他の弟達にも協力してもらえないかとそれとなく言うと「なんで俺が言うの?」と怒りました。協力してもらいたければ自分から言えということなのでしょう。そして「お前たちがお母さん(私)を手伝ってやれ!」とその矛先は息子たちに向かいます。息子たちにしてみれば「お婆ちゃんは誰の親なんだ」と憤慨ひとしきり。私の状況は理解しつつも「自分も手伝わないのに怒鳴られるなんて冗談じゃない」とこちらも非協力的でした。所詮孫だし、特にかわいがってもらったわけでもないので無理は言えません。
そんな状態でしたから、私は実家に帰りたくても帰れない。帰る時には3カ月前から義母のショートステイの予約をとらなければならない。義母に振り回されている間に実家の父も認知症になり大変になっていきます。
基本的には私と義弟の二人で義母の介護をしていましたから、他の兄弟はその大変さを全く知らなかったわけではないと思うのです。誰かがやってくれているからいいやという完全お任せモードだったのか、それとも頼まれるまではいいやとスタンバイモードだったのか。いずれにせよ、大変さの想像は出来ていなかったのかもしれません。
その後、私の実父を呼び寄せたこともあり、夫が義母の介護サービスの計画に関わるようになりました。夫は私や義弟の負担が減る形での介護計画をすすめてくれ、他の兄弟にも一月に1度は顔を出すようにメールを入れてくれました。一時、義母の健康状態が悪化したことがあり、あと数カ月くらいしか生きられないと医師から告げられたりもしたので、それも夫や他の兄弟の協力につながったのかもしれません。
義母は元気な頃「言わないとわからないわよ」と言い、自分から率先して動くタイプではありませんでした。でも、誰もが何でも言いたいことを言えるわけではないのですから、私としては「言われなくても自分から動こうよ」と思います。
そんな義母は、言われなくても気が付く嫁である私の世話になりながら、今も低空飛行を続けています。
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