<この体験記を書いた人>
ペンネーム:くもりのち晴れ
性別:女性
年齢:65
プロフィール:78歳の夫と2人暮らしの会社員です。
私の家では、食事中に臭いを発する調理品は出せないことになっています。
78歳の夫が、ニンニクや焼き魚、納豆の臭いに敏感で、これらの臭いをかぐと食欲が減退するからです。
私はほとんど嫌いなものはなく、カレー、炒め物、お肉などには隠し味でニンニクを使いたいのですが、夫の口には合わないようです。
夫は海辺で育ったのですが、不思議なことに魚が大嫌いで絶対に食べません。
以前、偏食が激しく、嫌いなものは見るのも嫌だというわがままな夫に嫌気がさし、わざと夫の目前で焼き魚を食べようとしたことがありました。
料理を並べた途端に「気持ちが悪い! もうご飯はいらない!」と、夫は自分の食事を流しにバッサリと捨ててしまいました。
キムチに至っては「どこか、よそで食べてくれ」と言い出す始末です。
ただ、ラッキョウも立派に臭いと思うのですが、ラッキョウは大好きで、瓶漬けしてくれとせがんできます。
また、夫はスルメが大好きで、居間でおやつに食べています。
私にすればスルメのほうが臭いのですが...。
何はともあれ、人の嫌がることをあえてする必要もないし、まして欲しいものを我慢する必要もないので、私が臭いのきつい料理を食べたいときは、外で買ってきて家の裏に出て食べることにしています。
家の裏はドアのない倉庫のようになっていて、私専用のテーブルを置いています。
となり街で暮らす70代の姉にLINEで自撮り写真を送り、「野菜とお肉のニンニクどっさり炒め、なう!」とコメントを入れると、お腹を抱えて笑うスタンプが返ってきます。
また、臭いがきつい料理はできませんが、瓶入りガーリックなどは調味料の引き出しに備えています。
40代と30代の子どもたちには偏食のない食育をしてきたので、夫ファーストの食生活に同情してくれています。
ところが、近ごろはこんなこともあるのです。
夫でも孫はかわいいらしく、別居中の子ども家族が来たときは、嫌いな食事が並んでも黙認しています。
そして、皆の食事が終わるまで自分の食事に箸をつけようとはしません。
好き嫌いするのを見られたくないのでしょうね。
小学生の孫・Hに「じいちゃんはどうしてみんなと一緒に食べないの?」と聞かれると、「じいちゃんは、後でH君たちの残った物を食べるから」とうまく言い逃れています。
私は笑いをこらえるのに必死で、夫の偏食を知っている子どもたちは苦笑いしながら、「Hたちはいっぱい食べてじいちゃんと早く遊びなさい」と取り繕ってくれます。
皆の食事が終わって、臭いの発するものを全て片付けてから夫の食事が始まりますが、孫たちにせかされてそそくさと済ませています。
その姿をちょっぴり意地悪な気持ちで微笑ましく見ています。
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