「2号店の運営を友人のAさんに任せていた父。しかしある日、急にAさんがいなくなったのです。お金と商品を持って夜逃げしたAさん。友人から裏切られた父のことを思うと胸が痛んでやみません」

■突然の意味不明な電話...実家に一体何が?
母の話によると、店の売れ筋商品と運営資金として預けていた数十万円を持ち出し、急に連絡が取れなくなったとのことでした。
両親が営む本店の経営状態は良好でしたが、我が家にとって損害は小さくありません。
もちろん、両親は可能な限りAさんの行方を捜し、警察にも届けました。
事件に巻き込まれた可能性も含めて捜査していましたが、とうとう消息は分からずじまい。
両親は忙しい本店の営業の合間を縫って2号店を店じまいし、その後の対応にも追われる日々でした。
何とか落ち着きを取り戻したのですが、問題は金銭的なことだけではありません。
私としては、短気な父がさぞかし怒っているだろうと思ったのですが、意外にも怒りよりも大きかったのは落胆でした。
父は私たちの前で怒りを見せず、ただ力が抜けたような苦笑いを浮かべ、それは父をよく知る私たちにとっては意外すぎるものでした。
「体調とか事情があるのだろう、とか言ってて...」
母の言葉に、父にとってAさんが大切な仲間だったと悟りました。
Aさんがまだ常連客だった頃、よく閉店時間を過ぎても2人で楽しそうに話し込んでいたことを思い出しました。
人付き合いの少ない父にとって、Aさんは数少ない信頼できる友人だったのです。
少なくとも父はそう思っていたのだと思います。
落ち込む父の姿はあまり見たことがなく、私は胸が痛くなりました。
父は残った店を最後までやり遂げ、81歳で亡くなりました。
あの男性も健在なら80歳過ぎの高齢者のはずです。
生きているなら、父の墓前で頭を下げて謝ってほしい...。
いまの私の心情です。
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