アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの副会長に任命された時のお話です。
【前回】採決も取らずに3年生役員の雑談で物事が決まるPTA定例会。それに対抗する「新たな作戦」とは
2年・1年の役員達に私が学校側のスパイじゃないと分かってもらうには、実際の行いを見てもらうしかない。
まぁ、学校側として私をスパイにするつもりがあるかどうかは知らないが、そもそもそんな話を聞かされた事も無い上に私自身にそのつもりが無い。
そして全校をあげての地域清掃当日を迎えた。
小中のPTA時代は学校からPTAの予定表が配られ、お手隙の保護者は役員関係なく参加してくださいとお願いが来ていたが、この高校は全て委員や役員のみに連絡が行く。
よって、私は前年度に役員じゃなかったのでこんな行事がある事すら知らなかった。
「そう言えばジャージ登校があったな...」という程度しか記憶が無い。
ならば当然私も上下ジャージで挑もうではないか。
相変わらず会長はお仕事で来られないので、全力で張り切っちゃうぞ。
小中の頃の保護者参加清掃は校内だけで、生徒の手が届かない高い位置にある窓だったり、生徒では持ち上げられない鉄の蓋の側溝だったりのお手伝いだった。
ところが地域清掃と言うくらいなので、学校の近隣住民と共に大掛かりな掃除になる訳で、溝掃除だけでなく川ざらいなども含まれる。
私自身が卒業した母校だったが、在学時にはこんな活動が全く無かったので、「この学校ってボランティア精神旺盛ですねぇ」と何気なくその場にいた役員の方たちに呟いた。
すると「普段の行いが悪いからよ」と返って来たので驚いた。
聞くところによると、普段通学路で使っている道路付近のいたるところに生徒がペットボトルやゴミを捨て、近隣住民からかなりのクレームが来ていたらしい。
その都度、教職員数名が飛んで行っては謝罪しゴミを拾って片付けていたそうで、その罪滅ぼし的に年1回の地域清掃に全校あげて参加する事になったと言う。
なるほど...、そりゃ大変だ。
この日は授業が無いので地域清掃の時間に合わせて生徒は登校し、掃除が終わり次第解散となる。
PTAの役員達も同じ時間に集合するので、担当の行事委員の皆さんが続々と集まって来てくださる。
中にはもう既に生徒と一緒になって掃除を始めている委員さん達もいる。
集合時間が過ぎたので2年・1年の本部役員と行事委員達に掃除用具やごみ袋を手渡すものの、肝心の3年の行事委員長が来ない。
2年の行事副委員長に聞くと、「PTA会議室にいらっしゃいました」と言う。
「PTA会議室にいらっしゃってどうされますのでしょうか?? すぐ呼んできてくださいませ」
私はPTA会議室に行かずに直接集合場所である倉庫に来たので、本当に何をしていらっしゃるのでしょうか? と目が笑っていなかったのだろう。
「もう皆さんお掃除を開始されているので、委員長さんも至急合流してくださいと伝えてください」
副委員長が小走りにPTA会議室に向かった。
その後私は、学校から一番遠い位置で掃除をしている委員さん達の所でゴミ袋が足りなくなっているのではと聞いたので配りに行った。
「お疲れ様です。ゴミ袋でーす」
ここで掃除に当たっている委員さん達は、近隣住民が掃除をし始めているのを見て「もう始まっている!」と学校に行く事無く直接この場で掃除に参加した方達だった。
もう既にパンパンになっているゴミ袋が数袋あったので、上を縛っては指定された集積所に何往復もして運んだ。
掃除をする気満々で来ていた私は、軍手も忘れずおまけにゴム手袋や熊手にスコップも持参していた。
一緒に掃除をしていた委員さん達にも貸し、一気に仕上げるぞ的な連帯感が楽しい。
綺麗になった溝や道路沿いの植木を見ると、すがすがしい達成感がある。
もうそろそろ住民の皆さんも掃除を終わりにする様で、委員さん達にもそれぞれ切りの良い所で解散してもらおう。
「そろそろお掃除も終わりになった様ですんで、解散して頂いてOKです。本日はご協力ありがとうございました!」
そう言う私に委員さんの一人が声をかけた。
「ええっと...、行事委員さんですよね?」
「いえいえ、副会長なんですよぉ。ハハハハ」
「ええー! 副会長さんですかー!!!」
「いや本当に、こんな奴が副会長で申し訳ない。ヘヘヘヘ」
私立高校のPTA副会長が、ジャージの上下でスコップと熊手を持って溝掃除をするとは思わなかったらしい。
いやしますよ、PTA行事なんですもの。
当然でございますでしょ?
と、その時だった。
「みなさ~ん、ご苦労様です~」
学校のある方角からピシッとしたスーツ姿で颯爽と歩いてきたのは、元会長の米沢さんだった。
その横にはこれまたスーツ姿の行事委員長がいる。
「ご苦労様です~。皆さんお帰りの際にはPTA会議室でお茶のご用意をしておりますから、ぜひ休憩して帰ってくださいね~。お菓子のご用意もあります~」
えっ? なんでこの人来た??
行事委員長、なんでスーツだ??
米沢さんは微笑みを振りまいて戻って行った。
「あ、あの...、私達これで帰らせてもらっていいですか...?」
「あ、ええもちろん!!」
そりゃお茶飲んで休憩するなら、わざわざPTA会議室まで戻ってあいつらの顔見ながらは嫌だろう。
皆さんにはその場で帰って頂いた。
私はPTA会議室に急いだ。
ガラッと戸を開けると、そこには掃除が終わった本部役員や行事副委員長さんがいて、奥には米沢さんと行事委員長に3年ボスの川上さんが優雅に紅茶を飲んでいた。
「今日は地域清掃だったんですけど!! 行事委員長さんは何してたんですか!!」
私の勢いにビクッとしたものの、隣に米沢さんと川上さんがいるせいか委員長はプイッとそっぽを向いた。
私は米沢さんと川上さんには目もくれず、委員長に向かって言った。
「どうしてスーツなんですか!? お掃除はされましたか!?」
こちらを見もしない委員長。
「あのね! 3年は皆さんのお掃除をサポートする立場でいたらいいんです! せっかくお茶とお菓子のご用意をしてお待ちしていたのに~。皆さん帰っちゃったのね~」
米沢さんがこちらを睨みつけて言った。
お前ら、勝ったつもりでおるんやないぞ...。
私は心の中で拳を握った。
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