<この体験記を書いた人>
ペンネーム:みょうえ
性別:女性
年齢:50代
プロフィール:フルタイムで働いています。子どもからも手が離れ、親の介護の真っ最中です。
5月後半、毎年田植えの季節になると思い出す光景があります。
今から10年前に88歳で他界した叔母が「植えなおし」をする姿です。
叔母は83歳で自転車で転んでから足を悪くしました。
腰も少し曲がってしまったのですが、日常生活を送ることはできていました。
叔母は若いときから農業を何十年もやっているため、田んぼを作る苦労をよく知っています。
足を悪くしてからも田んぼの様子が気になるのか、作業自体はできなくても田植えや稲刈りの時期はずっと作業をしている人のそばにいました。
私(当時40代)は農作業はまだまだ半人前でしたので、よく叱られていました。
春になると、農家では田植えの準備を始めます。
箱に土を入れ、田植えができるようにもみの芽出しをし、苗が長く伸びれば田植えの準備完了です。
機械で田植えをしていきます。
昔とくらべるとずいぶん楽になりましたが、まだ人手がいることも多くあります。
例えば、田んぼの角や機械で植えることができない場所などは、今でも手で植える、植えなおしをしなければなりません。
この植えなおしを叔母はやり続けていました。
叔母が85歳のときのことです。
当時、叔母はまだ歩くことはできたのですが、田んぼの中は水が多く足も取られてしまいます。
さすがに危ないと周りも止めたのですが、叔母は植えなおしをすると言ってききません。
そこで、もし転んだとしてもすぐに田んぼから上がれる安全な場所を選んで、叔母に植えなおしをしてもらいました。
叔母はよろよろしながらも懸命に苗を植えていました。
手で植えた苗は曲がっていましたが、転げることもなく植えなおしも無事に終わりました。
曲がってしまっていた苗は、こっそり私たちが直しました。
叔母の「少しでも手伝いたい」という気持ちをみんな分かっているので、黙って手伝ってくれました。
全部の植えなおしはできませんでしたが、少しでも手伝えた思いで叔母は満足そうでした。
そして、これが叔母の最後の田植えとなりました。
その後、叔母は寝たきりになりましたが、田植えの季節になると「田植えの手伝いに行かなきゃ」と口にしていました。
何十年もしてきた田植えの仕事だったので気になったのでしょう。
田植えの準備が始まると、一生懸命に手伝おうとする叔母の姿が思い出されます。
そして、叔母が近くで見守ってくれているような気がするのです。
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