55歳での早期退職。不登校の娘のために決断してみるのも悪くない

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ペンネーム:はっぽーしゅ
性別:男
年齢:56
プロフィール:父は要介護4、母は要支援2ですが、近所に住む姉妹が献身的に見てくれており、そちらは助かっています。ただ自身が自堕落生活から生活習慣病のデパートで、アルコール依存症と診断されたことも。

私の周辺では、定年まで勤めあげる人はあまり多くなく、知人・友人のほとんどが40代から50代で「卒業」しています。高度成長がない中で、企業の制度は昔ながらのピラミッド構造、怒涛のデジタル進化によるとめどない効率化にも後押しされ、ポスト争いはどんどん厳しくなる一方。誰もが幸せに60歳までサラリーマン生活を完遂できるとは、考えること自体が困難になっている気がします。

50歳を過ぎるあたりから、ごく一部の「勝てる」人材を除き、多くのサラリーマンがなんらか居づらい雰囲気を感じるでしょう。露骨か遠回しかの違いぐらいはあったとしても、ビジネス社会にいる限り、構造的にやむを得ないことです。退職金など美味しそうなエサも目の前にぶら下がる、決断の時。決め手は、「背中を押す何か」があるかどうか、その「何か」がどれほど強い動機であるかにかかってきます。正直、もう辞めたいけれど「決め手になる何か」が見当たらない。ふんぎりが付けられず、鬱々としながらも給料をもらい続ける人も多いのではないでしょうか。はい、私自身がまさに、そういう55歳でした。

後押しになる何かはないかと探す際に、ふとそれまでは見向きもしなかった家庭内に目をやると、これがまあ実に課題の宝庫。妻は不満だらけ、子供は言うことを聞かない、親は加齢による問題を抱え始めている。言ってみれば、「辞める言い訳」なんて、いくらでも転がっていました。こうなると、ポイントとなるのは自分自身の問題意識です。どの言い訳を「背中を押す何か」として選択するか、だけのことだったりします。

私の場合、妻は仕事を持ち自立していました。遠隔地にいる老親は要介護ながら、近くに住む兄弟が面倒を見てくれていました。しかし高校生の娘が、不登校問題を抱えていました。

情けないかな50過ぎの父親、娘がいつから、なぜ学校に行かなくなったのか、全然知りませんでした。直接訊ねても、「うっせえなあ」しか返ってこず、考えてみれば長いことほとんど口を聞いていないことに気付き、愕然としました。それでも、毎日少しずつでも、タレントや音楽の話題に分からないまま相槌を打つだけでも、こちらから歩み寄れば案外、氷は溶け始めるものです。不登校という悩みそのものには一切触れず、当り障りのない昔話や芸能話を交わしていると、なんとなく会話が成立していったのです。考えてみれば学校に行っていない分、向こうもヒマで退屈していたのでしょう。こっちが飲み過ぎない限り(酔っ払いは厳禁、すべてが水の泡に!)、1カ月後にはかなり気さくに話していました。直接尋ねたわけではないですが、不登校の背後にある人間関係や、容姿にこだわり過ぎるため人前に出られない精神構造など、課題の本質が見えてきたのです。

どうやら、学校に無理やり戻してもいいことはなさそうだ。時間をかけてカウンセリングを受けながら、通信制高校でも受けさせたほうがいい。かといって、精神的に不安定なティーンエイジャーを放し飼いにするのも危なっかしい。しかし妻には仕事がある。

一方、自分自身はどうだろう。会社にどれほど貢献できているか。必要とされる度合いで言うと、会社、家庭、どこか大きいか。家で娘の面倒を見るのと、会社でだんだん少なくなる給料をもらい続けるのと、どちらが納得できるか。背中を押すかどうか決めるのは結局のところ、自分自身でした。

高校生の勉強ぐらい、多少は見てやることができます。学生時代の一人暮らしを思い出せば、ある程度の家事ぐらいできます。家のローンは、53歳で終わっていました。早期退職の条件と、今後減っていく給料と、また仕事を続けるからこそ生じるであろう健康不安とを秤にかけると、「背中を押す」のは案外簡単でした。

もちろん経済的な理由や配偶者の理解など、人それぞれに環境は異なるでしょう。しかし状況次第では、家庭の事情で早期退職に踏み切るのは決して「逃げ」ではないと思っています。起業や再就職はもちろん立派な選択肢だと思いますが、少なくとも自分は、加速度的に進歩するデジタル界を追いかけて事業を行っていく自信は持てませんでした。一方、家の中のことなら、まあ何とかなります。世の中になんらかの価値を提供していきたいだけでしたら、その矛先が家庭に向いていても、悪くないのではないかと思っています。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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