＜この体験記を書いた人＞
ペンネーム：みわちゃん
性別：女性
年齢：61
プロフィール：結婚してから美容室には一度も行ったことがありません。
今から45年ほど前、特に校則が厳しくない芸術系の高校に通っていました。
当時はファッション雑誌を見ながらいつもわざわざ原宿まで出かけ、はやりの美容室に行き、パーマをかけていました。
ところが、結婚をしてから40年近く、私は美容室に行っていません。
お母さんが幼子の髪の毛を切る話はよく聞きますが、我が家は夫（70歳）が私のヘアカットをしてくれるのです。
夫は美容師ではありませんが、中学生の頃からいつも自分の姉妹のヘアカットをしていたのだそうです。
ヘアカットをするときは、まず三面鏡の前に座り、風呂敷を首に縛ります。
私は風呂敷の裾を両手に持ち、切った髪の毛が床に落ちないようにします。
「よろしくお願いします」と夫に一礼。
そこからはもう「まな板の上の鯉」です。
夫はカットするとき、特に髪の毛は濡らしません。
必要なときはアイロンがけに使う霧吹きでシュッシュッです。
持つのは、布地を裁断するときに使う大ぶりなハサミ、カッター、竹櫛。
夫によると、カッターは枝毛を切るのにいいのだそうです。
ただ、カッターを使って髪の毛を切ると、ジョリジョリとあたかも坊主頭か虎刈りにでもされそうな凄い音が頭に響きます。
50代の始めまでは白髪も抜いてくれていて、まるでお猿さんの毛づくろいのようでした。
さすがに今は白髪が多すぎて、抜いていたら禿げ頭になってしまいますけどね。
所要時間はわずか15分ほど。
ただし、仕上げのブローは私の担当です。
ヘアスタイルもおまかせで、夫が考えながら切ってくれます。
夫の好みの髪型ならば、なんでもいいかと思っているのですが、思いっきり短くカットされたこともありました。
「誰のヘアスタイルを参考にしたの？」
「夏目三久」
え～っ!! それは...さすがに顔の作りが違うんだから～。
夫は日頃から、テレビや雑誌を見ながら、次はどんな髪型にしようか考えているようです。
いつも周りからはこんなことを聞かれます。
「ところで、旦那さんの髪の毛は奥さんが切るのですか？」
「いえいえ、とんでもない。夫は美容院でカットしてもらっています」
「それはそれは、おしゃれな髪型なのですね」
「いえいえ、いたって普通のおじさんのヘアスタイルなんですよ。シャンプーをして、頭をプルッツプルって振ったら乾いてしまうようなやつ」
夫は私だけの美容師さんなのです。
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