株式会社パソナによると、今年1月に改正通訳案内士法が施行され、これまで有資格者に限られていた規制が緩和されたことで、資格を持っていない個人でも有償で訪日観光客等への通訳案内業務ができるようになりました。
このように自分の得意とするスキルや知識を個人間で提供し合うことを「スキルシェア」といいます。シェアするのは語学のみならず、プログラミングや料理、スポーツなどさまざまです。「スキルシェア」が世間に浸透してきたことで、以前よりも特殊な知識や技術を気軽に依頼することができるようになってきています。しかしながら、この流れは長所も短所も持ち合わせています。実際のところ「スキルシェア」はどうなのか、さまざまな面から探っていきましょう。
「スキルシェア」はなぜ盛り上がるのか?
「スキルシェア」が人気の理由は、何と言っても「手軽さ」にあります。個人間でスキルや知識をシェアすることで、今まではプロに依頼するしかなかったようなサービスも、低コストで気軽に利用できるようになりました。また、スキルシェアを利用してお得に習い事をするサービスもいろいろと展開されています。
2011年にリリースされた習い事マッチングサービス「サイタ」は、サービス開始から5年で累計受講生数5万人を超えており、提供する習い事のジャンルも、語学、音楽、スポーツ、話術などさまざまです。
また、フリマアプリで知られるメルカリは、2018年にスキルシェアサービス「teacha」を開始予定。「知識やスキルというサービス領域においても、モノと同じく誰もが簡単に教えたり学んだりすることができるスキルシェア領域の促進を目指します」と述べています。
「ココナラ」では「みんなの得意を売り買い」をキャッチコピーとしてサービスを運営。SNSのアイコン作成や、似顔絵なども人気のスキルの1つです。
ココナラが実施した「シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査」によると、スキルシェアの提供者について、男性の5割以上は5万円以上の月収を得ていますが、女性は、全体でも約7割が5万円未満であるとのこと。スキルシェアを提供する理由としては、男性は「自由に使えるお金を稼ぎたい」が、女性は「時間と場所にとらわれない働き方をしたい」という結果になったそうです。
スキルシェアの良い点、そして気になる不安点は?
先に紹介したココナラの調査では、シェアリングサービスの利用理由として、7割近くが「リーズナブルな価格」と述べています。ほかにも「コストパフォーマンスの良さ」「必要なタイミングで必要な分だけ利用できる」など、生産性を重視する結果にもなりました。
株式会社ココナラ「シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査」より
また、女性は結婚や出産でキャリアが中断されがちでしたが、スキルシェアを使用することで自分らしく働くことができます。子育てなどによって時間が限られても、隙間時間を使って仕事をし、それによって社会からの疎外感に対する不安が解消される人もいるようです。
一方、スキルシェアという新しい動きに不安を抱える人が多いことも事実です。このサービスを利用するにあたっての不安や課題については、「個人間トラブルが起こらないか不安」という意見がもっとも多く、「個人情報漏洩などセキュリティ面が不安」「トラブル時の保証制度が整っていない」という意見も見られました。
株式会社ココナラ「シェアリングサービス・スキルシェア利用に関する意識・実態調査」より
また、冒頭で述べた通訳案内関連だけでなく、2018年6月には住宅宿泊事業法の施行が予定されています。それによって、個人が自宅や空き部屋などを宿泊施設として提供する民泊サービスも、これから全国に広まっていくと予想されます。
いくつかの法改正にともない、さらに幅広い範囲に広がっていくであろう「スキルシェア」。新しい働き方として便利になる一方、個人間のやり取りには不安要素も多くあります。起こりうるトラブルの解消に向けて、サービス各社の改善やサポートも期待されつつ、個々人が責任を持ってスキルシェアを活用していくことが大切です。
文/山川温