"非モテ"の新人類に一言。「恋愛は...いい!」/大人の男と女のつきあい方

"非モテ"の新人類に一言。「恋愛は...いい!」/大人の男と女のつきあい方 pixta_24856693_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「非モテでもいい」という新人類たちの主張

この世に生を受けて以来、フラれた経験は山ほどある。ドスンと跳ね返されたり、軽くかわされたり、冷たく無視されたり、打率でいえば一割前後。プロ野球選手なら、即解雇である。それでもめげずに、心惹かれた女性にはアプローチしてきた。

だから、モテたい一心でおしゃれに気を使い、教養を身につけ、女性の心を射止めようとがんばる。女性を思う情熱に身を焦がし、あり余る性欲のはけ口を求めてさすらい、うまくことが運ばずに悶々とした夜を重ねる。
それが通常の若い男性の生態だと思っていたら、世の中、そういう人間ばかりではないらしい。

「非モテ」......こんな言葉があるという。この言葉は、そもそも恋愛したいのに異性にモテない人という意味で生まれたのだが、最近では「自主的にモテたくない人」という意味に変化しているのだとか。

その「非モテ」な人々が集まる「非モテSNS」(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)が盛況なのだという。メンバーの特徴は、異性に興味はないが性欲はある。ただし、異性ではない別の何かに性的興奮を覚えるのだという。
ライブドア・ニュース(2009年12月1日)が、J-CASTニュースの提供として伝えていた。

それによれば、「非モテSNS」のメンバー資格は、モテなかった悲惨な話を日記で書くことと、彼女や彼氏ができたら即退会しなければならないということ。私から見れば「???」の世界なのだが、会員の数は七万人以上(2012年4月現在)いるというから驚きだ。

「そんなにモテるっていうのは必要なのかな。あくまでモテるっていうのは一つの価値観なので、モテることが―つの『正義』として世の中に蔓延(まんえん)するのはおかしいと思う」

テレビの報道番組で語ったメンバーの意見はこうだ。
〇別に恋人がいなくてもかまわない(男女とも)
〇女性に生活のリズムを崩されたくない(男性の発言)
〇セックスとかもあまりしたくない(女性の発言)
〇(男性とのつきあいで)感情を左右されたくない(女性の発言)
〇相手を深く知るのは術が重い(男女とも)

いわゆる「肉食系」男子である私としては、この意見を頭のなかで整理するのにかなりの時間を要する。整理ができても理解は不可能に近い。
おそらく、ひと言でいえば、他者との濃密な人間関係を築きたくない、したがって異性との人間関係が深くなるのもイヤだ、という人たちなのだろう。

社会的背景を考えれば、男女をめぐる凄惨(せいさん)な事件や結婚詐欺事件などによって、恋愛やセックスに対するプラスのイメージを持ちにくくなっているということもあるのだろう。生活パターンから見ると、ゲームやネットなどヴァーチャルな世界との交流が増えたために、ナマの現実との向き合い方を身につけることが不得手になったのではないかと思う。

恋愛をめぐるちょっとした挫折、男女のわずかな誤解から生じた不都合などによって、異性に対する心が閉ざされてしまったのも原因の一っだろう。彼ら、彼女たちにはそれを克服して、何かを達成しようとする意欲もないのかもしれない。
とはいっても、私のこうした考察など、彼らにとっては無意味だろう。いや、無意味どころか、すでに彼らの耳はふさがれてしまっていて、私の声など届かないだろう。

私の生き方は、先にあげた彼らの五項目の意見の対極にあるといっていい。
〇恋人は欲しい
〇好きな女性とリズムを共有したい
〇セックスはしたい
〇(女性とのつきあいで)感情を大いに刺激したい
〇相手を深く知るのはかなり愉しい

「非モテ」の人たちは誰に迷惑をかけているわけでもないから、私がとやかく意見することでもないのだが、男女のつきあいを効率や面倒くささという尺度だけで測っていては始まらない。男女のつきあいは人間関係にも大いに役立つと思うのだが、「非モテ」の人たちにとってはそんな必要もないのかもしれない。

だが一方で『モテキ』(講談社刊)というマンガが人気になった。30間近の冴えない、モテない派遣社員の男が、急にモテはじめる。つまり突然、モテ期がやってきて右往左往する話だ。ドラマや映画でも話題になった。「非モテSNS」の会員たちにも「恋人できたら即退会」というルールがある。やはり潜在意識では「モテたい」という願望があると思うのだが。

「非モテ」の人たちがいうように「モテることを正義」と規定するつもりは毛頭ないが、私にとっては地球上のこの日本で宇宙人に出会ったような気分ではある。そんな宇宙人が増えて、日本はどうなるのだろうかと思う。声は届かないかもしれないが、「恋愛はいい」と伝えたい。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

 
この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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