「落鮎や日に日に水のおそろしき」深まりゆく秋を詠む/井上弘美先生と句から学ぶ俳句

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井上弘美先生に学ぶ、旬の俳句。10月は「深まりゆく秋を詠む」というテーマでご紹介します。

前の記事:「固有名詞を季語で生かす 井上弘美先生と句から学ぶ俳句」

  

落鮎や日に日に水のおそろしき 加賀千代 

秋も深まって来ると、産卵のために鮎が川を下ってきます。これが「落鮎」で、秋の季語です。この頃の鮎は色艶も落ち、錆鮎などとも呼ばれます。

この句は、産卵後のやせ細った落鮎が力なく水流に身をゆだね、川を下ってゆく様子を捉えています。日を追ってその数が増してゆくのを目の当たりにして、残酷とも言える自然の在りように、恐ろしさを感じたのです。自然の摂理を見つめた句と言えます。

作者は一七〇三(元禄十六)年、加賀国に生まれ、若くして女流俳人として名を成しました。一七七五(安永四)年に逝去。

  

妻に手を貸せし十三夜もありし 後藤比奈夫

今年の中秋の名月は十月四日、十三夜は十一月一日です。例年に比べて、秋も深まっての月を眺めることになります。

作者は今年百歳を迎えた、現役最高齢の作家です。二〇〇二月(平成十四)年に奥様を亡くされた時〈織女星妻を思へば煌めきぬ〉など、妻恋の句を多く詠まれました。その妻を偲んでの一句で、「十三夜」が胸に沁みます。

十五夜の明るさに比べて、ひと月後の十三夜は風も冷たく、秋が終わってゆく寂しさを感じます。妻なき歳月を嚙みしめるような味わいです。作者は名だたる賞を受賞。最新句集『あんこーる』からの一句です。

  

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<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2017年10月号に掲載の情報です。

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