おすすめです。知花くららさんの短歌入門書/伊藤先生の短歌の時間

pixta_22560804_S.jpg短歌入門書を活用しましょう

短歌の入門書が何冊も出ている中で、最近出版された『あなたと短歌』(朝日新聞出版)はおすすめの一冊です。対話形式で、短歌の作り方を教えているのは永田和宏さんです。永田さんは現代を代表する歌人で、昨年は現代短歌大賞を受賞されました。一方で細胞生物学者としても世界的なお仕事をしています。というととっつきにくそうですが、その柔らかい語り口には定評があります。

永田さんにいろいろな質問をしているのは知花(ちばな)くららさんです。ファッションモデルとしてのご活躍は言うまでもなく国連世界食糧計画の日本大使としても世界各国を訪問するなど、幅広い活動を行っています。そんな忙しい知花さんが短歌を詠むきっかけになったのは与謝野晶子の作品との出会いのようです。

「私自身の心がかき乱されているときのほうが歌を作りやすくなるんです。そういうときは身体の奥底から何かが溢れ出してくるような感覚があって、それを歌にしたくなる」と知花さんは語っていました。彼女の内面の深さと言葉への欲求が印象的です。それに対して永田さんは、「あまりにも自分の目の前にあるものが圧倒的な力を持っていると、何も見えなくなってしまうし、言葉も出てこなくなる。でも歌を作るときは一歩外に出て、自分を見る感じになるんですよ」と言っています。

本格的な短歌入門書ですが、分かりやすく、読んでいて楽しい本です。二人の対話には(笑)の字が多々付いています。知花さんの突っ込みが鋭いです。「歌を詠む―作歌の技術と心」の章と、「歌を読む-題詠と解釈の楽しみ」の章では、短歌を具体的に鑑賞・批評していて興味が尽きません。そこは本を読んでもらうことにして、知花さんの題詠をご紹介します。まず「風」。

 冬の朝
 右耳であなたを聴いてゐる
 浜辺の松は
 風の形

 

続いて「雪」をご紹介します。

 額(ぬか)寄せて春まで暮らす
 胃を満たす
 野菜は雪の
 貯蔵庫に少し

 

 

<歌始入門>
日本語の特色の一つにオノマトペの多さが挙げられます。擬態語、擬音語(擬声語)を指します。私は書棚に『日本語オノマトペ辞典』(小学館)を置いています。あちこちのページを開いてみるだけで面白く、いろいろなことを教えられます。

 君かへす朝の舗石
 さくさくと
 雪よ林檎の香のごとく降れ 
 北原白秋

知花くららさんが上記の本で好きな一首として挙げている歌です。この「さくさく」を『日本語オノマトペ辞典』で引くと、なんと五つの意味が出ています。その五つものたくさんの意味、いわば言いがたい意味を持っているのがオノマトペの特色です。時にはオノマトペを使って歌を作ってみませんか。

 

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<教えてくれた人>
伊藤一彦(いとう・かずひこ)先生

1943年、
宮崎市生まれ。歌人。NHK全国短歌大会選考委員。歌誌『心の花』の選者。撮影/吉澤広哉

この記事は『毎日が発見』2018年4月号に掲載の情報です。
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