1月19日から公開される映画『パディントン2』。『ハリー・ポッター』シリーズのプロデューサーが手掛ける、大人も子どもも楽しめる上質のエンターテイメント映画が続編になって帰ってきました。心優しい紳士的なクマのパディントンをジャマする敵・フェニックス・ブキャナンを、遊び心たっぷりに演じているのは英国の人気俳優、ヒュー・グラントさん。映画の魅力から、キャリアを重ねた今の思いまで、お得意のジョーク満載でインタビューに答えてくれました。
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パディントンが思い出させてくれるもの
愛くるしい表情のパディントン
ーー『パディントン2』、ヒューさんからご覧になった作品の魅力は?
ヒュー まずはユーモアですね。原作もそうですが、ポール・キングは非常にクレバーなコメディを作ることのできる監督ですから。そして、深いところで心の琴線に触れてきますよね。人々が孤立しやすいデジタル社会の中で、パディントンは人と人とが対面で接することやコミュニティの大切さを思い出させてくれる。ネガティブなことばかり書くようなネット・ユーザーのことを"ネット・トロール"というけれど、パディントンは真逆の存在だと思いますね。
ーークマのパディントンが人間の集うロンドンで暮らす物語には、バックグラウンドの異なる人たちが互いを受け入れ合う大切さも描かれています。そういう深みがあるのも、この物語の魅力だなと思います。
ヒュー そうですね。マイケル・ボンドがこのシリーズを書き始めたのは、1950年代、ちょうどパディントンの住んでいる辺りのロンドンに、西インド諸島の人々が移民としてやってきたころ。彼らが街の人々に好意的に受け入れられることもあれば、なかなか受け入れられない現状もあるというのを本で読んで、そこからインスパイアされたそうだからね。
演じることが、より面白くなってきた
印象的すぎるフェニックスの初登場シーン
ーーフェニックス役は、今のヒューさんだからこそ味わい深い役なのではないかと思います。年齢を重ねてよかったなと思うことはありますか?
ヒュー 演じることが、より面白くなってきたね。(『ノッティングヒルの恋人』や『ブリジット・ジョーンズの日記など』)いろいろなロマンティック・コメディのヒット作に関われたのはありがたいことだし、誇りに思っているけれど、どんな役者もロマコメの主役よりは、悪役やクセのある脇役の方が演じ甲斐があるものだと思うからね。
ーー今後、そういう役のヒューさんも、もっと見てみたいですね。
ヒュー 僕自身が面白いと思える、そういう役のオファーがあれば、積極的にやっていきたいと思っているよ。最新作はTVドラマ「A Very English Scandal」(BBC One)。(パディントンの声を担当している)ベン・ウィショーと共演していて、自信作です。アマゾン・プライム・ビデオでも配信されるよ。
ーーアマゾンで配信というお話が出ましたが、スマホやテレビで見られるデジタル配信の作品が増えたり、映画の世界にもデジタル化の波が押し寄せています。長年、俳優を続けてこられたヒューさんは、どう感じていらっしゃいますか。
ヒュー 僕は古いタイプの人間だから、映画ならではのセルロイドのロマンティックな感じが失われゆくのは非常に悲しいんです。100席、1000席ある大きな映画館でフィルムの映写機から光が漏れて映像が浮かび上がる......あの感じにグラマラスなものを感じていたから。デジタル映像をテレビで見る、今の感覚とはちょっと違うんだよね。映画作りも変わってきて、フィルムで撮影していた頃は、その日に撮影した映像は翌日のラッシュ(粗編集した映像)まで見られなかったけれど、今はその場でモニターで見ることができる。映画作りのミステリアスな部分が失われてしまって残念だなと思っています。
いい歳を重ねるために、大事にしていることは?
とある事情から、パディントンが料理人に......!?
ーーキャリアの長いヒューさんですが、いい歳を重ねるために意識していることはありますか?
ヒュー どうかな......僕は失敗から、いろいろなことを学んできたタイプだと思うけど......年相応の服を着ることかな。僕は57歳だから57歳の男性の服を着ているけれど、これで25歳の服を着たらエライことになるから(笑)。
ーー本当にお変わりないですね。作品の中でも、キレキレのダンスを披露されています。
ヒュー この歳になって、自分の気持ちを歌とダンスで表現したくなってね(笑)。最後の方に出てくるから、エンド・クレジットまで観ていただきたいですね。
ーー劇中では楽しい扮装も、次々に披露されています。まさかのびっくり扮装もありますが、ヒューさんのイチオシは?
ヒュー 尼僧の格好がいちばん心地よかったかな。
ーー心が穏やかになりました?
ヒュー そうだね。衣装はいただいたので、悲しい気持ちになった時は着ています(注:もちろん冗談です)。
まさかの尼僧スタイル。他にも意外な扮装の数々が!
取材・文・撮影(プロフィール)/多賀谷浩子
ヒュー・グラント
1960年、イギリス・ロンドン生まれ。オックスフォード大学卒業後、82年に映画デビュー。『モーリス』(87)でヴェネチア国際映画際男優賞、『フォー・ウェディング』(94)でゴールデン・グローブ賞を受賞。甘いビジュアルと卓越したコメディ・センスで『ノッティングヒルの恋人』(99)、『ブリジット・ジョーンズの日記』(01)など、ハリウッドのロマンティック・コメディに数多く出演し、名実ともにハリウッドのトップスターに。世界中で息長く愛されている。
全国公開中
監督:ポール・キング 製作:デヴィッド・ハイマン
出演:ベン・ウィショー(声の出演)、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ヒュー・グラント、ジム・ブロードベントほか
配給:キノフィルムズ 2017年 イギリス・フランス 104分
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