心のままに人生を楽しんだターシャ・テューダー。その暮らしを描いた映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』の監督・松谷光絵さんとプロデューサー・鈴木ゆかりさんに聞きました。素顔のターシャから受け取ったものは何ですか?
前編「「毎日が平凡であるのはすごいこと」ターシャ・テューダー 花と動物を愛したアメリカの絵本作家(前編)」はこちら。
『自分の王国の王様になりなさい。王様は国を捨ててはいけません』そんな言葉をもらいました
――映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』の公開に続いて、DVDも発売されます。他にも、日本では人生を楽しむターシャの名言集のような本がたくさん出版され、読まれています。
松谷「そうですね。でも、ターシャ本人にそのことを話すと、『え? 私の言葉はだいたい受け売りよ』って言うんです(笑)。読んだ本や影響を受けた人から聞いた言葉を自分の中の糧としてもっているだけだって。人生を楽しんでというメッセージも、特にアドバイスをくださいとお願いして出たものではないんですよ」
――でも、心に直接届きます。
松谷「言葉が血肉化されているんですね。生きてきた中で、自分の経験と相まって、他の人の言葉さえも"自分"のものになってしまうのでしょう」
鈴木「自分の言葉を伝えるとに、時代や他人を否定するようなこともありませんでした。
あの人はこう言ったけど、この場合はこうだけど、というふうに前置きをしない」
――心に残っているターシャの言葉はありますか?
松谷「自分の国の王様になりなさいと言われました」
――どういう意味でしょう?
松谷「自分が嫌だと思っていることの原因を作っているのは、たいてい自分だということです。例えば庭の道具なら、ターシャはプラスチックのものが大嫌い。でも街にはたくさん売られています。それを買ってきて、1個ぐらい、まあしょうがないやって庭に入れてしまったら、その次も1個あるからいいやと言い訳をしてどんどん使うようになってしまう。どんな場面であれ、不本意なそんな環境を作ったのは、誰のせいでもなく自分」
――優しくも厳しい言葉ですね。
松谷「本当にしたいことがあるのなら闘うべきだと教えられました。『自分のことをどうでもいいやって諦めたら、自分がかわいそう。自分が自分に捨てられる、そんな悲劇はない』と」
ーー自分と、まっすぐ向き合って、本当に好きなことを見つけるのは難しいことです。
鈴木「難しいです。ターシャはそれをちゃんとやってきた心の強い人なんだと痛感します」
真冬以外はいつも裸足で庭を歩いていたターシャ。「細身なのにとても力持ち。摘み草を入れた重たいかごも自分で運んでいました」と鈴木さん。
庭の花を摘んで。
何を食べて、どう生きるか。その生き方が地球にどう影響するか...。
何十年も前から、それを知っていた人
――スローライフの母と言われるターシャですが、環境問題や自然に関してはどんなふうに考えていたのでしょう?
松谷「『世界各地で異常気象が起きているのは、人があまりに自分勝手に暮らしているから
ではないか』と。意識高く暮らしていたと思います」
鈴木「自分の生き方が地球に与える影響を何十年も前から考えて生きていたと、彼女の友達も言っていました。生き方そのものがメッセージなのではないでしょうか」
19世紀風にしつらえられたターシャの寝室。
夕方4時半になると、ゆっくりお茶を淹れるのが日課でした。
ターシャと語らうのは左から孫のウインズロー、息子のセス、ウインズローの妻・エイミー。いまは彼らが庭を受け継ぎ草花を育てている。曾孫はターシャの心を受け継いで好奇心たっぷりとか。
Ⓒ2017映画『ターシャ・テューダー』製作委員会
取材・文/飯田充代 撮影/斎藤大地(松谷さん・鈴木さん)
監督
動物ドキュメンタリーの他、「世界遺産」(TBS)を始め作品多数。「喜びは創り出すもの~ターシャ・テューダー四季の庭」(NHK)のシリーズも手掛ける。
プロデューサー
テレコムスタッフに入社後、ライフスタイルドキュメントを数多く制作。ターシャシリーズの他『ベニシアさんの四季の庭』も。