みやざきワインで短歌を詠む/伊藤先生の短歌の時間

pixta_23792516_S.jpg宮崎県は焼酎王国と言われることがあります。県民はアルコールと言えば、確かにまず焼酎を飲みます。その宮崎県でワイン党が増えています。理由の一つは県内にワイナリーができ、おいしいワインを手軽に飲めるようになったからでしょう。五ヶ瀬(ごかせ)、都農(つの)、綾(あや)、都城(みやこのじょう)にワイナリーがあります。

実は先日「みやざきワインを愛する会」が宮崎市内のホテルで開かれました。その会で「みやざきワイン短歌」の優秀作品が表彰されました。審査は俵万智さんと私が行いました。入賞作品の一部を紹介します。

 

みやざきで
飲んだワインの一口に
体の中であがる波しぶき
山本節子

ワインを一口飲んだときに身体のなかで「波しぶき」があがるとは見事な感覚の表現だと思います。おいしい、うまい、という常套語(じょうとうご)を使わずに比喩を用いたところがさすがですね。

 

ふぐ料理本場に嫁ぎし
娘子(むすめご)が未だに強請る(ねだる)
みやざきワイン
三浦もとえ

ふぐ料理の本場といえば下関。そして、下関にはおいしい日本酒もあります。しかし娘さんはふるさとの「みやざきワイン」の味が忘れられないようです。

 

もも肉をメディアムに焼き
ワイン添ふ
施設より帰る母の好物
三ヶ尻(みかじり)恭子

もも肉やワインが好きとは何と元気なお母さんでしょう! 「施設」を利用しているのですから高齢の方だと思いますが、その食欲に感心しました。

 

じっくりと
ゆっくりねかし味をだす
我が人生もワインのように
野見山信代

この歌はワインを比喩として生かしています。自分の人生も熟成させていきたいと。
私のワインの歌を最後にご紹介したいともいます。
 


摘む醸す
さまざまの手を思ひつつ
滑らかな酸味味はへるなり

  

<Column>
伊藤先生に教わる、はじめての人の「歌始め入門」

よく使われる助動詞に「き」があります。過去・回想の助動詞です。たとえば「首すじをは
うバリカンに身をすくめ父困らせし戦後ははるか」という作の「父困らせ」の「し」は「き」の連体形で、過去・回想をしっかり表わしています。

では「ゴミ袋の色を間違ひ戻されし自治会長の夫の名前に」の作はどうでしょうか。面白い内容の歌ですが「戻され」の「し」は不適切です。3句で切れている歌なので「戻されき」が正しいでしょう。ただ、ここは過去よりも「戻され」と完了を意味する「ぬ」の方がいいと思います。

 

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<教えてくれた人>
伊藤一彦(いとう・かずひこ)先生

1943年、宮崎県生まれ。歌人。読売文学賞選考委員。歌誌『心の花』の選者。

この記事は『毎日が発見』2018年1月号に掲載の情報です。

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