歌人の伊藤一彦さんによる短歌の入門。今回は「一語の効果」に注目です。
前回ふれた高野公彦氏の歌を、さらに紹介してみましょう。
地下鉄の コンクリートの 枕木の
無限数列のうへ 地霊ゆく
どんな場面を歌っているかお分かりになるかと思います。地下鉄の電車です。枕木がずっと並んでいるのを「無限数列」と詠んだのも巧みな表現ですが、電車を「地霊」と捉えたところに感心しました。地下の精霊とはユーモアも感じさせます。もう一首紹介します。
水面の ひかりの膜よ あめんぼの
あなうらが踏む 六点の銀
あめんぼが光る水面に浮かんでいる様です。 あめんぼの足の裏が踏んでいる「六点の銀」の語、見事ですね。
<教えてくれた人>
伊藤一彦(いとう・かずひこ)先生
伊藤一彦(いとう・かずひこ)先生
1943年、宮崎県生まれ。歌人。読売文学賞選考委員。歌誌『心の花』の選者。