万年筆は大人のたしなみ、その理由を人気エッセイストが解説

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『センスいい人がしている80のこと』 (有川真由美/扶桑社)第8回【全10回】

センスよく暮らしたい、おしゃれだと思われたい、そう考えている方はたくさんいると思います。でも、センスっていったい何で、どうやったら身に付くのでしょう?  『センスいい人がしている80のこと』(扶桑社)は、50種類の仕事、約50か国を旅してきた作家・有川真由美氏が「センスいいな」と思った魅力的な人のこと、感性を磨くためにやってきたことを満載した1冊です。 今回はその中から、センスがいい人がしていた「作法」についてご紹介します。マネしやすいことばかりなので、日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれません。

※本記事は有川真由美著の書籍『センスいい人がしている80のこと』から一部抜粋・編集しました。

万年筆で文字を書く

書類を送ってもらうとき、万年筆で書かれた一筆箋が添えられていると、「お!」と目が留まります。相手を大切にしようとする心構えがさりげなく感じられて、こちらもちゃんと対応したくなります。

ビジネスマンだけでなく、芸術家、学生、主婦など意外な人が意外なところで万年筆を使っているのを見ると、新鮮な驚きとともに、「こだわりのある人」「デキる人」「丁寧な人」「物を大切にする人」など、さまざまな情報が伝わってきます。

ときどき、男性でファッションの一部のように、胸ポケットにモンブランなどの高級万年筆を挿している人がいますが、あまりエレガントとはいえません。

人に見せびらかすためでなく、たしなみや礼儀、自分の好みとして内ポケットやカバンに忍ばせておいて、いざというときに取り出すのが粋ではないでしょうか。

万年筆を好むのには、文字が美しく味わい深くなる、書いていて気持ちがいい、長く使うと愛着がわくなど、いろいろと意味があります。

パソコンがない時代の文豪は、万年筆の原稿が多いもの。紙に触れることでインクが零れ落ちるという構造上、ペン先に力を加えることなく速くすらすらと書ける、長時間書いても疲れない、気持ちがダイレクトに出ることが理由ではないかと思います。丁寧に書けば丁寧に、乱れた心で書けば乱れて......といった具合に、驚くほど、書き手の心の状態が文字に表れやすいのも万年筆ならでは。

ユダヤ人の家庭に嫁いだ女性から「ユダヤの子供は13歳のお祝いに万年筆をもらう」と聞いたことがあります。これまで普段使いしていた鉛筆を万年筆に変えるのは、文字と同じように、言葉も行動も簡単に消すことができず、あとに残る。自分の考えと責任をもって生活しようとする大人の心構えなのです。

万年筆は大人のたしなみとして一本持ち、大切に使っていきたいものです。

 

有川真由美

作家、写真家。鹿児島県姶良市出身。台湾国立高雄第一科技大学応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。約50カ国を旅し、旅エッセイも手がける。

※本記事は有川真由美著の書籍『センスいい人がしている80のこと』から一部抜粋・編集しました。
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