『センスいい人がしている80のこと』 (有川真由美/扶桑社)第3回【全10回】
センスよく暮らしたい、おしゃれだと思われたい、そう考えている方はたくさんいると思います。でも、センスっていったい何で、どうやったら身に付くのでしょう? 『センスいい人がしている80のこと』(扶桑社)は、50種類の仕事、約50か国を旅してきた作家・有川真由美氏が「センスいいな」と思った魅力的な人のこと、感性を磨くためにやってきたことを満載した1冊です。 今回はその中から、センスがいい人がしていた「作法」についてご紹介します。マネしやすいことばかりなので、日々の生活に取り入れてみるのもいいかもしれません。
※本記事は有川真由美著の書籍『センスいい人がしている80のこと』から一部抜粋・編集しました。
お店で出された器をじっくり眺めてみる
外食をしたとき、料理をじっくり味わうのはもちろん、器もじっくり眺めてみるといいでしょう。茶道でお茶をいただくときの作法のように。
洋食ではお皿を持ち上げずに見るのがマナーですが、和食であれば、鑑賞するのもマナーのひとつ。食べる前や食べた後、器を両手で包み込むように持ってみるのです。傾けたり回したりしながら、ゆっくり鑑賞し、「ザラザラしていい風合い」と器の肌合いも感じたり、「紅葉の柄は、いまの季節に合わせてくれたんだな」とご主人の細やかな心遣いを感じたりします。
そんなふうに器に興味をもつようになると、「この器は波佐見焼ですか?」「よくわかりましたね」「繊細で軽いのに丈夫なんですよね」と、会話も楽しめるように。器に詳しくなくても「この藍色の模様、好きです」などと伝えると、大抵は喜んでくれます。器、盛りつけ方、メニュー、壁に掛かっている絵、床の間のしつらえなども観察することで、その店のご主人がどんな哲学をもっているかもわかるのです。
私が通うイタリアンレストランは、シェフ自らが馬小屋をリノベーションしてつくった店。タイルの床もゴツゴツしたテーブルも手作りで、野山で摘んだ花を飾り、自家菜園の野菜やベーコンも時間をかけて作る。なににも頼らず、そこにあるものから工夫して、生み出そうとする感性と哲学があふれています。
その店は料理も本物で、遠方から飛行機で何度もやってくる人もいるほど。ですが、感じようとしない人には、物事の奥行きはわからず、ただ「美味しい店」で通りすぎてしまうでしょう。わかろうとする人にしか、わからない世界があるのです。
興味をもって観察する習慣は、私たちの感性を育て、知識を与えてくれます。いちばんの喜びは、感性が通じ合う人同士でつながれること。センスのいい人とつながる感性や知識は、人生を豊かにするためにもっとも大きな財産だと思うのです。