遺伝性のアルツハイマー病で人生の先が長くないことを悟った人気小説家の涼子と韓国人留学生の青年チャネの恋を描いた映画『蝶の眠り』。主演の中山美穂さんと韓国ドラマで日本でも人気のキム・ジェウクさんにお話を伺いました。
きっかけは韓国人監督からの日本語で書かれた手紙
――『蝶の眠り』、素敵な作品でした。出演の決め手になったのは?
中山 (韓国の実力派監督の)チョン・ジェウンさんが日本語で熱心なお手紙をくださって。初めてお会いした時から、「どうしても」って熱いラブコールを頂いていたのですが、そんな手紙、なかなかいただかないじゃないですか。どうして私を起用したいのか、この映画をどんな作品にしたいのか......長い手紙が全部、日本語で書かれていて、感動してしまって。あとは50代の女性が主人公ということですね。私自身、あまり年齢は意識していないのですが、年齢を重ねるほど表現できることがあるので、そこにも惹かれました。
キム 僕も監督の作品のファンだったので。チョン・ジェウン監督は劇映画もドキュメンタリーも撮るのですが、監督のドキュメンタリー映画をよく観ていたんです。それでジェウン監督が劇映画の脚本を書いていて、日本語ができる俳優を探しているというので(※キム・ジェウクさんは幼少期を日本で過ごしたので、日本語が堪能。この日のインタビューも日本語で答えてくれました)、ぜひやりたいと思って。シナリオも面白かったですし。その時はまだ涼子役が決まっていなかったのですが、その後、中山美穂さんに決まって、「イェー!」ってハイタッチしたい気持ちになりました(笑)。昔から美穂さんの作品を観ていましたから、すごくうれしかったです。
――チョン・ジェウン監督、日本だと『子猫をお願い』(01)という名作が公開されています。その時にプロモーション来日しましたが、ちょっとお話しただけで興味引かれてしまうチャーミングな女性ですね。
中山 そうそう。本当にチャーミングですね。
キム チャーミングっていうか、おかしな人です(笑)。もう、大好きです。今回、ご一緒できて、本当にうれしかったですね。
やっぱりスターは違うなと思いました(笑)
――中山さんと共演されて、いかがでしたか?
キム 頑張り屋さん。撮影中、ここは怒ってもいいだろうというときも絶対に怒らないんです。実は、ちょっと心配していたんですよ。美穂さんは、僕が幼い頃から観ていた大スター。スターの中には、撮影現場で女王様みたいにふるまう人もいるので......(笑)。でも、実際に撮影に入ったら、すごい頑張り屋さんでびっくりしました。
中山 怒るってエネルギーいるじゃないですか(笑)。そういうことに気をとられたくないんですよ、現場では芝居のことだけ考えていたいから。撮影現場では、その現場の流儀に委ねようと思っているんです。
キム やっぱりスターは違うなと思いました(笑)。
――中山さんから見たキム・ジェウクさんは?
中山 映画のストーリーに沿って、出会いの場面から順番に撮っていったんです。だから、ジェウクさんとチャネが重なるような感じがして、私は涼子として、すごく自然にいさせてもらえました。
――そんなキム・ジェウクさんは、チャネと近いところはあるんですか?
キム チャネが劇中で「虚無主義者」だって言われる台詞があるんです。太宰治の『人間失格』を読んで日本に来たっていう設定で。10代の頃、僕にもそういう時期があったんですよ。だから、そのときの自分はどんなことを考えて生きていたんだろうって、チャネ役はそこをスタート地点に作り上げていった気がします。
――深いところで、ご自身とつながっている役なんですね。
キム いえいえ、そんなカッコいいものではないです(笑)。でも、そんなに遠いというか......理解できない役ではなかったような気がします。
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取材・文/多賀谷浩子
中山美穂(なかやま・みほ)さん
1970年、東京都出身。岩井俊二監督の映画『Love Letter』でアジアでの人気も高い。今作は『サヨナライツカ』(10)に続く韓国人監督の作品。
キム・ジェウク さん
ドラマ『コーヒープリンス1号店』(07)で日本でも人気。幼少期を東京で過ごし、日本語も堪能。昨年はドラマ『愛の温度』のヒットも。
『蝶の眠り』
5月12日(土)角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本・原案:チョン・ジェウン
出演:中山美穂、キム・ジェウク他
配給:KADOKAWA 2017年 日韓合作映画 112分
© 2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS
【あらすじ】病が進行していることを知った涼子(中山美穂)は最後の小説に取りかかり、初めて大学の教壇に立つ。そこで出会ったのが韓国人留学生のチャネ(キム・ジェウク)だった。二人の間には、やがて特別な絆が芽生えていくーー。