7月7日公開の映画『ボンジュール、アン』の監督は、『地獄の黙示録』の巨匠フランシス・フォード・コッポラの妻、エレノア・コッポラさん。80歳にして劇映画監督デビューを果たした彼女と、主演のダイアン・レインさんの対談をお届けします。
数十年の結婚生活の中で、夫に漠然とした不満を感じている主人公アン。この映画の旅を経て、彼女はその突破口を見つけていきます。アンが感じていた不満とは一体、何だったのか。80歳のエレノアさんの鋭い答えに、なるほど納得です。
-家族のために尽くしてきたアンは、50代に差しかかって、これから先の人生をどうしようか悩んでいます。
エレノア アンは子どもも手を離れて、人生の中間地点にいるんです。自分の人生を完璧に満たしてくれることを夫には期待できないし、それは別の男性に求められることでもない。そのことに気付き始めているんですね。
-以前、弊誌で「好きな著名人男性ランキング」というアンケートを実施したら、1位が「夫」だったんですよ。
エレノア まぁ!
ダイアン 面白いわね。
エレノア 日本の女性は浮気したりしないんですか?
-どうなんでしょう。でも、女性が若い男性と不倫するドラマがヒットしたりしています。
エレノア それはドラマの中だけ? 現実もそうなの?
-ドラマの中だけかと(笑)。
ダイアン ドラマを観て、空想の恋愛で満たされるのね。それは私にはない感覚かも(笑)。若い男性との不倫というと、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(42年)を思い出すわね(笑)
-そういうときめきを、家庭に生きる女性が思い出すような感覚が描かれていますよね。
ダイアン この映画は華々しい恋愛を描いたわけではないけれど、恋に落ちる可能性がある人とちょっとそれを楽しむ雰囲気、英語では"フラート"と云うんだけど、もしかしたら自分にもこういう可能性もあるんじゃないか...という状況がリアルに描かれています。
エレノア この映画で重要なのは恋愛とかセックスとか、そういうことじゃないんです。自分に100%関心を持ってくれる男性がいたということが、アンにとってはとてもうれしいことだったの。夫は彼女に関心がないでしょう。彼女は何が好きか、いまどういう気持ちでいるのか。自分に興味を持って、自分を見ていてくれるということ。そこが大事なんです。
ダイアン たしかにジャックは、あなたは自分自身をどう見ているの? って、旅の途中、何度もアンに尋ねますよね。
エレノア 彼女がテキスタイル(織物)が好きと言ったら、美術館にも連れていってくれるし、彼女がいつも写真を撮っていたら、興味を持って話を聞いてくれる。ああいうことが、アンはうれしかったんです。
ダイアン それによってアンは自分を再発見していくんです。迷っていたアンが、このドライブを通して、目の前の今を楽しめるようになる。その過程をアンと一緒に楽しんでもらえたら、うれしいなと思います。おいしいものが次々に出てくるから、映画を見ながら、きっとお腹が空きますよ(笑)。
『ボンジュール、アン』(原題 PARIS CAN WAIT)
7月7日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本・製作:エレノア・コッポラ
出演:ダイアン・レイン、アルノー・ヴィアール、アレック・ボールドウィンほか
2016年/アメリカ 92分
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
the photographer Eric Caro
公式サイト:http://bonjour-anne.jp/