抜け毛は自分とは関係ないと思い、特に気にせず生活していませんか? そんな方は要注意! 髪は抜け始める前からケアすることが重要なのです。特別なことは必要ありません。衣食住を中心とした生活習慣を根本から見直すだけで、数年後の未来の自分の髪に先行投資することができます。最新の科学的根拠をもとに知識を深め、薄毛にならないための生活を今から始めてみませんか。
抜け毛にまつわるさまざまな原因や治療法、ケアなどを薄毛治療の第一人者である岡嶋研二先生に伺います。
抜けない髪はない。髪には寿命があるのです!
髪には「毛周期」というサイクルがあり、成長期、退行期、休止期の3つに分かれています。このサイクルは一般的に男性で3~5年、女性で4~6年といわれています。この期間に必ず髪は抜け、生え変わるということになります。
髪の成長期が短縮し、休止期と退行期が延びることで髪が減ります
ひとつずつ、このサイクルにかかる時間を見ていきましょう。
「成長期」は髪の毛が伸びる時期で毛周期の約80%がこの期間だといわれます。
「退行期」は髪の成長が止まり始める時期。毛母細胞の分裂が終わり、毛根が縮小していきます。この期間は10~14日程度と短いです。
「休止期」は髪が抜け落ちる準備の時期で約15%がこの時期だといわれます。
髪の減少は、この「成長期」が短縮し、「退行期」と「休止期」が延びることから起こります。髪は早く抜けるのに、生えてくるのが遅くなり、結局、本数が少なくなってしまうのです。
もうみなさまお分かりだと思いますが、生えてくる量を増やす「成長期」を長くし、「退行期」と「休止期」を短くすることこそが、薄毛の改善方法となるわけです。
髪の「成長期」を短くさせてしまうのはホルモンのせい!
髪の成長期を短くさせ、男性型脱毛症(AGA)を引き起こすのは、DHT(ジヒドロテストステロン)という物質です。これは、男性ホルモンであるテストステロンが、毛根の5αリダクターゼという酵素により変化したものです。
女性の場合は、女性ホルモンが減少することで、男性ホルモンのバランスが優位になり、薄毛になるといわれています。
また、休止期を長くしてしまう原因のひとつに、ストレスと生活習慣の乱れがあげられます。ストレスを受けやすく溜め込みやすい人や、食生活の乱れや寝不足などに覚えがある人は、毛髪の成長に影響を及ぼしている可能性があるのです。
休止期を短くするためには、まず、ストレスの軽減と生活習慣の乱れを見直してみる必要があるでしょう。
次の記事「「髪が抜けやすいのは秋」は本当? 一番抜ける意外な季節とは/抜け毛予防(2)」はこちら。
取材・文/荒井さやか
岡嶋研二(おかじま・けんじ)先生
1978年、熊本大学医学部卒業。1982年、熊本大学大学院医学研究科修了(医学博士取得)。日本学術振興会特定国派遣研究員としてウィーン大学医学部への留学、熊本大学医学部助教授、そして名古屋市立大学大学院医学研究科教授を経て、2012年4月、名古屋Kクリニックを開院。血液学を中心に研究を進め、育毛作用を有するインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やす新たな方法を見いだし、育毛効果を発揮する治療法の開発へと応用している。