筋肉・体幹を鍛え、チーム一体化に感動も
皆さんは健康寿命という言葉をご存じだろうか。健康寿命とは日常生活に制限なく健康に暮らせる期間のこと。その延伸に向けて、国は様々な取り組みや提案を行なっている。同時に私たち自身も、末長く健康で元気に暮らせるよう努力する必要がある。そのとき、やはり運動は不可欠だ。世の中には「楽しく」、「するほどに魅了され」、何より「何歳からでも始められる」ものがある。実は日本の伝統芸能である和太鼓もそのひとつだ。心が踊るような和太鼓の魅力を紹介しよう。
脳を活性化、α波が増加
ご存じの通り、日本の平均寿命は世界のトップレベルだ。平成28年の日本の平均寿命は世界2位。男女別では男性は80.98年、女性は87.14年と、男女ともに過去最長を更新している。しかし、健康寿命は男性がおよそ71年、女性がおよそ74年と、平均寿命との差はあまりにも大きい。
この事実に目を向け、特にシニアの健康に特化した『健康和太鼓教室』を広めてきた企業がある。各種邦楽器の販売や和太鼓のスクールの運営等を行う「㈱太鼓センター」がそれだ。代表取締役の東宗謙さんは、和太鼓が人を魅了する事実を楽しそうに語る。
「当社の直営4つの和太鼓教室の総生徒数は約2千800人です。その内約400人が継続10年を超えているんですよ。年齢層に関しては、つい最近97歳の生徒さんが加わりました」
活動後に茶話会仲間との交流も東さんは、和太鼓をすることでいくつかの効果が期待できるという。
「ひとつは集団で実践することで他の人と関わることができるということです。シニアにとって他人との交流は特に大きな意味をもつので、健康和太鼓教室では1時間のレッスンのあとに茶話会を設けているんですよ」
また、肉体的な効果は誰もが実感できる。
「和太鼓の演奏には全身を使います。叩くたびに膝を曲げて腰を落とす、その動作を繰り返しています。1分間に50回、1時間のレッスンで3千回ほどのスクワットをしているようなものなのです。さらに、背筋を伸ばし、大きく腕を上げたり、移動して隣の太鼓を叩いたりもします。おかげで筋肉や体幹を鍛えられるのです」
健康和太鼓教室には、
「発表会でチームが一体化する感動は素晴らしい!100歳になっても続けたい」(80歳代女性)
「太鼓を打っているときと、みんなとおしゃべりできるのが楽しい!」(83歳女性)
「すでに7年続けています。老化防止につながるし、仲間ができました」(77歳男性)
といった喜びの声が溢れている。
軽度の認知症89%が改善。ストレス解消にも役立つ
同社は出張指導や公演も行っていて、特別養護施設で演奏することもある。その活動の中から興味深いことがわかった。
「平成14年、ある特別養護老人ホームで和太鼓を演奏したり、入所者に叩いてもらったりを10日間行いました。その結果、軽度の認知症の人たちの89%に改善が見られました。重度でも42%の人に改善が見られたのです(表1参照)。ホームのスタッフによると和太鼓に触れた日は明らかに徘徊などの諸症状が減ったというのです」
ほかにも関西学院大学と同社の研究では、和太鼓の演奏中は前頭前野が活性化することがわかった。演奏中の掛け合いの場面では、その活性化がさらに大きくなるという。
びわこ成蹊スポーツ大学との共同研究では、和太鼓教室の参加は眠気やだるさといった心理的身体的倦怠感を軽減させる効果が確認された。右脳でα波が増加し、ストレス解消に役立つことも確認されている。(老友新聞社)