地域によってさまざまなタイプがある「番茶」は、日常的に飲むお茶として、古くからなじまれています。この「番茶」、実は体にいい成分が豊富で、生活習慣病の予防に役立つことをご存じですか? 冷え性対策にもぴったりな飲み方のアレンジ方法もご紹介します。
食べ過ぎ予防や血糖値コントロールにも活躍
番茶は、主に新芽が伸びて硬くなった茶葉や秋から初冬にかけて摘んだお茶からつくられたものを指しますが、地域によって独特の製法でつくられるものも多くあります。名称の由来も、一番茶と二番茶の間に摘まれた「番外の茶」を表すという説や、遅い時期に摘む茶葉という意味を指す「晩茶」から転じたなど、諸説あります。
「カフェインが少なく、カテキンを多く含む番茶は、食べ過ぎてしまいがちな、いまの季節にぴったり。カテキンには、脂肪の蓄積を抑えたり、コレステロールを低下させて動脈硬化を防いだり、血糖値を下げるなどの効果があります。また、とりわけ血糖値が気になる方は、ポリサッカライドという成分が豊富な秋冬番茶(9~10 月ごろに収穫されたもの)がおすすめ。ポリサッカライドには血中のブドウ糖を効率よく処理する働きがあり、血糖値の上昇を抑えます。 ただし、熱に弱いので、水出しで入れた方がよいでしょう」とは、静岡県立大学食品栄養環境科学研究院・ 食品栄養科学部特任教授の中村順行先生。
体にいい番茶の2大効果とは?
●血糖値の抑制に
番茶の中でも、9~10月ごろに収穫される秋冬番茶には、血糖値を下げる効果の高いポリサッカライドが豊富。水出し茶にするとより効果的。
●脂肪蓄積の予防に
カフェインが少なく、カテキンを多く含む番茶は、糖の吸収を抑えて肝臓で 行われる糖新生を抑制する効果があり、食べ過ぎ防止に役立ちます。
産地によって個性いろいろな番茶たち
日本には、個性豊かな番茶が各地にあり、それぞれの地域の食文化に適した日常のお茶として愛されてきました。一般的に、関東で番茶というと、煎茶を使った緑色の茶葉のものを指します。一方、 関西では、仕上げ工程の際、火入れの程度をやや強くした葉を番茶として使うことも多 く、茶色い葉っぱ状のものがよく見られます。
常用茶として飲み続けることで生活習慣病のリスクを減らし、体の中から整えてくれる。番茶のパワーを見直してみましょう。
●産地別、番茶のタイプ
静岡茶(静岡県)
かつては、新芽の収穫後に伸びて硬化した葉からもつくられていたが、現在は、仕上げ工程で出る大型の葉を利用。 また、秋冬番茶も多い。
加賀棒茶 (石川県)
茶の茎を焙じ上げたお茶で、軽やかな香ばしさが特徴。強火でさっと焙じて香ばしさを引き出す。
赤ちゃん番茶 (滋賀県)
2~3 月に摘む葉を使用。茶葉が 厚く丈夫で、独特の香ばしさと さっぱりとした甘味。
京番茶(京都府)
焦げた葉や茎から出る煙を全て巻き込んで炒るため、スモーキーな香り。強い味わいも特徴。
親子番茶(奈良県)
新茶の残った芽と、熟成した親芽を一緒に刈り取って加工。茎や新芽など複雑な味わいを楽しめる。
阿波晩茶(徳島県)
一番茶芽を夏まで伸ばし、成熟した茶葉を採取。発酵由来の酸味が ほんのりと感じられるのが特徴。
熊野番茶 (和歌山県)
熊野地域に伝わる製法を基につくられるお茶。一番茶を釜で炒った後、天日でじっくり乾燥。最後に 強めに火香を入れて仕上げる。
三年番茶 (宮崎県)
その名の通り、製造後、3年以上熟成させたお茶。その後に、じっくり焙煎する。香ばしく、まろやかな甘味を感じられるのが特徴。
美作番茶(岡山県)
茶葉の形をそのまま残す特有の製法でつくられる番茶。焙じることで、香ばしく、まろやかな味に。
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取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/米山典子
中村順行(なかむら・よりゆき)先生
静岡県立大学食品栄養環境科学研究院・食品栄養科学部特任教授、食品栄養環境科学研究院附属茶学総合研究センター長。