重症になると死に至ることもある「夏型過敏性肺炎」。夏になると咳が出て、体が不調になる症状ですが、その原因はトリコスポロンというカビです。発祥しないために、また症状を改善するための方法を、千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科教授の中島裕史先生に伺いました。
前記事:「夏の「夏型過敏性肺炎」 予防にはカビ対策が必須!」はこちら。
夏型過敏性肺炎にならないために& 症状を改善するために
1 根本的に環境を変えるならリフォームもしくは引っ越しも!
家屋のカビが原因で夏型過敏性肺炎になった場合は、空気清浄機だけでは症状が治まらないことがあります。毎年、夏型過敏性肺炎を繰り返していると肺に傷が残り、肺機能が低下してしまうのです。それを防ぐためには、家屋の環境を変えることも検討する必要があります。古い材質部分のみをリフォームする、あるいは、思い切って建て替えたり、引っ越ししたりすることも、病気を治すための選択肢になります。
2 空気清浄機を有効活用してトリコスポロンを体内に入れない
目に見えないカビは、お部屋の空気中にも漂っているため、知らぬ間に吸い込んで体内に入ってしまいます。それを防ぐ一つの方法として、空気清浄機を活用しカビを除去することが有効です。カビはウイルスよりも格段に大きいので、空気清浄機で除去しやすいのです。また、部屋の換気をして湿度を下げることも、カビ退治では重要になります。カビは高温多湿を好むため、風通しを良くして湿度を抑えるように心掛けましょう。
3 カビが発生しやすいところを徹底的に掃除する
夏場に繁殖しやすいカビは、放っておくとどんどん増えていきます。短期間放置していただけで、黒カビだらけになることもあります。このときトリコスポロンも生じやすくなります。水回りなどカビが繁殖しやすい場所は、小まめに掃除をすることが大切です。ただし、カビの除去に役立つ塩素系の洗剤は、吸い込むとそれが原因で具合が悪くなることも。マスクや手袋の着用、窓を開けて換気をするなど、注意しながら掃除を行いましょう。
4 スキンケアは意外に重要!お風呂上がりに保湿を
夏型過敏性肺炎と直接は関係しませんが、最近、アレルギー疾患の発症予防に皮膚のバリア機能が重要であることが分かってきました。健康な皮膚の表面は角質層で覆われバリア機能を持っていますが、 肌が乾燥しているとバリア機能が損なわれやすくなります。お風呂上がりの保湿は、バリア機能を維持するのに役立ちます。ワセリンなどでもOK。全身のスキンケアは美しい肌へつながり、アレルギー疾患の予防もできれば一石二鳥ですね。
これも知っておきたい!予防と改善のための2つのこと
1.保険診療で検査可能
夏型過敏性肺炎は、主にウイルスが原因の夏風邪とは治療法や予防法が異なります。夏型過敏性肺炎か否かは、血液検査でトリコスポロンに対するIgG抗体の有無を調べることで分かります。保険診療で検査を受けられるので、まずはかかりつけ医に相談を。
2.食べ物では防げない!
花粉症では、ある種の食べ物が症状を軽減するといわれます。でも、カビが原因の夏型過敏性肺炎は、花粉症と免疫の仕組みが異なり、予防できる食べ物については科学的に証明されたものはありません。カビを体内に入れないようにすることが予防では重要になります。
中島裕史(なかじま・ひろし)先生
千葉大学医学部附属病院アレルギー・膠原病内科教授。宮崎医科大学(現・宮崎大学)卒業、千葉大学大学院修了(医学博士)。気管支ぜんそく治療のスペシャリストで、アレルギー疾患の診断・治療を長年行う。根治療法を開発すべく研究にも力を注ぐ。