糖尿病にならない、悪化させないための理想の血糖値は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー。血管内でヘモグロビンがブドウ糖と結合したもの。この数値が高いと、血管内のブドウ糖が多い高血糖であることを示す)が5.6%未満。注意すべき4つのポイントをご紹介します。
1つめのポイント「「腸のつぶやき」を聞いて「隠れ血糖トラブル」を発見!/糖尿病の最新知識(5)」はこちら。
2 「家族歴」のある人は特に早めの血糖コントロールを
日本では、大人になってから発症することが多い2型糖尿病患者の数は糖尿病全体の約95%を占めています。そしてその原因には遺伝要因と環境要因の2つがあります。
遺伝要因は、両親や祖父母などに糖尿病の人がいれば、いない人に比べて発症する可能性が高いとされるものですが、遺伝要因を持つ全ての人が発症するわけではありません。
食べ過ぎ、早食い、偏食、運動不足、肥満、高血圧、喫煙、飲酒などの生活習慣が環境要因で、これらが複数積み重なっていくと、糖尿病を発症するリスクがより高まります。遺伝要因がある人、環境要因がある人などは、どちらにも該当しない人よりも糖尿病を発症するリスクが高いため、早めに医師に相談した方がいいでしょう。
3 最新の糖尿病治療薬について知ろう
糖尿病の飲み薬には、(1)肥満になると生じるインスリン抵抗性を改善し、インスリンの効きを良くする薬、(2)インスリンの分泌を強制的に増やす薬、(3)小腸や腎臓からの糖の吸収を抑える薬があります。
(1)の薬は肥満を解消しなければ効果が十分に発揮されません。(2)の薬は、インスリンの分泌を促進するために、膵臓に負担をかけるだけでなく、不必要に血糖値が低下してめまい、ふらつき、意識障害、心筋梗塞などの心疾患、脳梗塞や認知症などのリスクも高めます。最も注目されているのが(3)の効能を持つ薬で、膵臓のインスリン分泌能力が低下した患者に適しています。膵臓を酷使せず、グルカゴンの働きを抑えつつ低血糖も抑制する他、心血管病のリスクも低下させます。この他に腎臓が糖を再取り込みするのを阻害して、尿糖を排泄させて高血糖を防ぐ薬もあります。
4 糖尿病が治りやすい性格、治りにくい性格
伊藤先生は糖尿病の治療を40年以上も続け、患者さんの全身を診て主治医として長く付き合うことをモットーとしています。
糖尿病が悪化しにくく、改善する人には「明るい」「意欲的」「データが好き」という傾向があるそうです。
明るく意欲的な人は、治療に積極的に取り組み、データが好きな人は、体重、血糖値、血圧などの変化に敏感なので、目標を持って、前向きに治療する傾向があるそうです。
暗く言葉少なで、消極的な人には、治療への意欲や体のデータへの関心を持つように診察中に世間話をしながら説得することもあるそうです。
「頑張れ」や「反省しなさい」より、「ありがとう」「いつも支えているよ」という家族や友人のサポートや心遣いも良い薬になるそうです。
構成/高谷優一 取材・文/宇山恵子
伊藤 裕(いとう・ひろし)先生
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。京都大学医学部卒。専門は高血圧、糖尿病、腎障害、抗加齢など。ホルモン分泌のメカニズムにも詳しい。最新刊(監修)は『糖尿病は先読みで防ぐ・治す』(講談社)。