健康診断では分からない〝隠れ糖尿病〟危ないのは食後血糖値!/糖尿病の最新知識(1)

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空腹時の血糖値が正常でも食後高血糖には注意が必要

「血糖値は正常だから糖尿病は心配なし!」と油断していませんか? 

健診で測定する空腹時の血糖値に異常がなくても、食後の満腹時の血糖値が急激に上昇したり、食後2時間以上たっても血糖値が下がらない状態を「食後高血糖」と言い、「隠れ糖尿病」として注意が必要です。自覚症状もなく、じわりじわりと血管を汚し脳卒中や認知症のリスクを高めてしまうからです。

「厳しい指摘かもしれませんが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー。血管内でヘモグロビンがブドウ糖と結合したもの。この数値が高いと、血管内のブドウ糖が多い「(高血糖)ことを示す)が5.6%以上の人は、決して『他人事』と思わずに、食後高血糖に注意してください。早めに食後高血糖に気付けば、薬や注射に頼る前に、食事や運動を見直すだけでも改善できます」と、慶應義塾大学医学部教授の伊藤裕先生は説明します。

「空腹時には明らかに正常な血糖値でも食後高血糖が隠れているの?」と驚いた方もいるでしょう。血糖値は健康な人でも食事の前後で大きく変動し、検査では食後高血糖が確認できないまま変動幅が大きくなると、体に負担をかけてさまざまな病気を引き起こしてしまうのです。

「血糖値の乱高下で負担がかかるのが、腎臓と脳です」と伊藤先生。腎臓は血液をろ過し、老廃物や毒素や塩分を体外に排出し、必要なものは再吸収して貯蔵します。腎臓の働きが落ちると、尿を作り出せずにむくみが出たり、通常は尿中に排泄される廃棄物が血液中に残存する尿毒症などを引き起こします。このように腎臓は体内成分のリサイクルと水分調節には欠かせない臓器で、昼夜を問わず働き続けています。健康な人の場合、血中の糖は必要なものなので再吸収されますが、増え過ぎると腎臓が再吸収しようと頑張り過ぎて疲れてしまい腎機能が低下します。また、全身の司令塔である脳は働くエネルギーとして糖を利用します。血糖値が急に下がり過ぎると、糖が不足し、エネルギー不足となり脳の働きが低下し、頭痛、めまい、意識障害などを起こします。これが続くと脳に少しずつダメージを与え、認知症発症のリスクが高まります。

このような状態に陥らないためにも、食後高血糖を早めに発見したいものです。

「理想的なのは、食事の前後で血糖値を測定すること。最近では、採血の必要がない、血糖値測定器具も開発され、病院でなくても手軽に血糖値を測定できるようになりつつあります。ぜひ利用してください」。

  

糖尿病の「いま」がわかる3つのキーワード

こんな人は注意が必要です!
HbA1cが5.6%以上、早食い、大食い、肥満気味、メタボリックシンドローム気味、運動不足、ストレスが多い、甘いものが好き、お酒好き、タバコを吸う人などは食後高血糖の可能性あり。

データで知る食後高血糖(血糖値スパイク)
空腹時血糖値が正常値でも食後の血糖値が200㎎/㎗以上、または食後2時間以上経過しても血糖値が140㎎/㎗未満に下がらない人は食後高血糖の疑いあり。

糖尿病、脳卒中、認知症のリスクが高くなる!
食事のたびに異常な高血糖を繰り返していくうちに活性酸素という老化を促進する物質が発生し、少しずつ血管が傷ついて、動脈硬化が進行します。

  

構成/高谷優一 取材・文/宇山恵子

  

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健康診断では分からない〝隠れ糖尿病〟危ないのは食後血糖値!/糖尿病の最新知識(1) 伊藤 裕(いとう・ひろし)先生
<教えてくれた人>
伊藤 裕(いとう・ひろし)先生
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。京都大学医学部卒。専門は高血圧、糖尿病、腎障害、抗加齢など。ホルモン分泌のメカニズムにも詳しい。最新刊(監修)は『糖尿病は先読みで防ぐ・治す』(講談社)。
 
この記事は『毎日が発見』2017年10月号に掲載の情報です。

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