日本人の3人に1人が悩んでいるとされ、「生活習慣病」の一つと見なされるようになっている「痔」。肛門は長寿とともに〝耐用年数〟をはるかに超え、その環境はますます厳しくなっています。今回は痔の種類や症状の改善方法などを、平田肛門科医院の3代目院長である平田雅彦先生に伺いました。
痔は肛門付近の炎症がきっかけとなって起こりますが、加齢とともに免疫機能が衰える、便秘や長時間の座位が重なるなどで、痔核や裂肛を発症しやすくなります。痔のタイプはどんなものがあるのでしょうか?
痔の三大疾患とは?
「痔核(じかく)《いぼ痔》」、「裂肛(れっこう)《切れ痔》」、「痔ろう《あな痔》」の三つのタイプに大きく分けられ、原因や症状が異なります。
(1)痔核《いぼ痔》
【何が原因?】
痔の中で最も多いタイプ。長年いきんで排便したり、座ったままの生活が多いと、肛門付近の毛細血管に血がたまり、いぼ状に膨らむ。
【どんな症状?】
●内痔核(直腸側の粘膜にできる)
-排便時に痛みはないが、出血がある
-排便後、残便感がある
-便の外側に血がついている
-肛門付近にかゆみがある
-排便時にいぼが飛び出してくる
●外痔核(肛門の皮膚にできる)
-排便に関係なく出血し、腫れて痛む
-突然お尻が痛みだし、肛門の皮膚にいぼができる
(2)裂肛《切れ痔》
【何が原因?】
便秘時の硬い便の排泄や勢いよく出る下痢などにより、肛門の皮膚が切れたり裂けたりして傷がつく。
【どんな症状?】
-排便時に強い痛みがあり、その後しばらく鈍痛が続く
-排便時に少量の出血がある
-慢性化すると潰瘍(かいよう)やポリープができたり、肛門が狭くなる肛門狭窄(きょうさく)になることも
(3)痔ろう《あな痔》
【何が原因?】
ストレスなどで免疫の働きが低下したり、アルコールなどによる下痢が原因で、便中の大腸菌などの細菌が肛門腺に入り込み化膿する。男性に多い。
【どんな症状?】
●肛門周囲膿瘍(のうよう) ※悪化すると痔ろうになる
-お尻の痛みや腫れがある
-38~39℃の発熱がある
●痔ろう
-肛門付近から膿が出て、下着を汚すようになる
痔はどこにできる?
部位が部位だけに、受診をためらうケースが見受けられますが、種類によっては、初期の段階では手術をしないで済む場合がほとんどです。がん化する恐れのある痔ろうや、大腸がんなど重大な病気が隠れている場合もあるので、異常を感じたら、早めに受診しましょう。
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取材・文/古谷玲子(デコ)
平田雅彦(ひらた・まさひこ)先生
1935年開院の平田肛門科医院3代目院長。1981年筑波大学医学専門学群卒業。日本大腸肛門病学会肛門領域の指導医。患者本位の親切医療を目指す。著書に『痔の最新治療』(主婦の友社)、『痔の9割は自分で治せる』(マキノ出版)など。