前回に引き続き、旭川皮フ形成外科クリニック院長の水野寿子先生に聞く漢方薬のお話です。さらさらとした顆粒状のエキス剤は、お湯に溶かして飲むのがお勧めです。もともとの煎じ薬の形に戻して飲んだほうが吸収がいいからです。
前の記事「漢方の基本は気、血、水/なんとなく調子が悪いと思ったら。試してみませんか?漢方薬(1)」はこちら。
Q1.アンチエイジング医学としての漢方薬とは?
漢方薬がアンチエイジングに効果的とされるのは、その高い抗酸化力のためです。酸化ストレスが増悪因子となるアトピー性皮膚炎やニキビなどにも、相乗効果的に、抗酸化作用が期待できます。
酸化ストレスとは、活性酸素の生成と抗酸化反応のバランスが崩れることで起こります。活性酸素の生成には、大気汚染や放射線などの環境因子のほか、食事の内容や、酒の飲み過ぎ、喫煙、過剰な運動、ストレス等の生活習慣にかかわる因子など、いろいろなものがかかわっています。
抗酸化反応には抗酸化物質の存在が関係し、その外因性のものとしては、アスコルビン酸やトコフェロール、カロテン、ポリフェノール等の、主に食べ物に含まれる物質のほか、サプリメントや点滴などで摂取されるものがあります。また、複数の天然生薬からなる漢方薬は、おしなべて強い抗酸化力を持っています。植物は、気候の変動や害虫などから身を守るために抗酸化力を身に付けてきました。つまり、漢方薬を服用することで、活性酸素の生成を抑制したり、外因性の抗酸化反応を増強させることができるのです。生薬に含まれるのは、アントシアニン、ポリフェノール類、ジアントロン類、フラボノイド、糖類、アスコルビン酸、カフェ酸誘導体、サポニン、カテキン、タンニン類、フェノール類、ステロイド、精油、アルカロイド、トコフェロール、リグナン、など。これらの抗酸化物質が、たっぷりなのです。
Q2.女性に適した漢方薬は何ですか?
女性特有の月経周期や更年期の揺らぎは、どちらも内分泌に関係するものです。前号でも触れましたが、"瘀血(おけつ)"という血に着目する処方が適しています。この瘀血を治す駆瘀血剤(くおけつざい)にはいろいろありますが、中でも女性への三大処方として有名なのが、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん・ツムラ23)、加味逍遙散(かみしょうようさん・ツムラ24)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん・KB-25)です。
構成する生薬には、少ないものと多いものがあります。傾向として、生薬の種類の少ないものほど、薬としての切れ味は良くなります。例えば温経湯(うんけいとう)ですが、多種類の生薬で構成されています。この漢方薬は、数日飲んで効くものではなく、慢性的な肌や唇の荒れ、冷え症だが顔がほてる、不妊の治療等、慢性的な症状に対して比較的長期間服用することで、次第に体調が改善されていきます。
水野寿子(みずの・ひさこ)先生
医学博士。旭川皮フ形成外科クリニック院長。旭川医科大学を卒業後、北里大学形成外科に入局し、外科や救急・麻酔科などを経験。美容クリニックでの勤務を経て、2003年、女性のさまざまな悩みをトータルに診療できる品川イーストワンスキンクリニックを開業。惜しまれつつ2015年3月、同クリニックを閉院。両親の介護のため北海道・旭川に拠点を移す。日本形成外科学会認定医。美容外科学会会員。美容外科医師会会員。美容医療協会会員。問:旭川皮フ形成外科クリニック 0166-74-8921 http://bihadahime.com