健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
中高年に健康を意識させた点は評価できるが...
みなさんもよくご存じのメタボリックシンドローム(metabolic.syndrome)。これは、「医者がかかわってもかかわらなくても治癒する病気」の代表選手です。
それもそのはず、肥満に加えて、高血圧、高脂血症、糖尿病のうち、2つ以上を併発するとメタボリックシンドローム(略してメタボ)と呼びます。巷にはメタボの専門医も増えているようで、世も末かなと呆れるばかりです。
メタボリックシンドロームをひと言で言うと、ただの食べ過ぎ、運動不足で、それ以上でもそれ以下でもありません。したがって、食べ過ぎをやめて運動すれば治ります。
ときどきe -クリニックの相談窓口にもメタボについて問い合わせがありますが、「食べ過ぎに注意して、できるだけ体を動かせば治ります。わざわざ相談するまでもないですよ」と、答えることにしています。繰り返しますが、ただの食べ過ぎと運動不足ですから、メタボと告知されたとしても、まったくあわてなくて大丈夫です。今日明日に急いで対処しなくても、手遅れになることもなければ、死に直結することもありません。
あえて問題を挙げるなら、「今までの悪い生活習慣を改善せずにいると、場合によっては命に別状があることもある」という程度のことです。普通の方なら医者の世話になることなく、十分に元に戻れるのです。
このような異常なメタボブームに火をつけた主犯は、なんといっても僕たち医者でしょう。代謝やホルモンというのは、学問的には非常に面白い分野ではありますが、それと困っている患者さんを助けるということには、大きな隔たりがあります。
健康に無関心だった人たちに健康を意識させるといった点では、メタボブームは評価できるかもしれません。しかし医者としては、その前に、がんや神経変性疾患、脊髄損傷、視力・聴力障害など、研究すべきテーマが山ほどあると思うのです。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
「カラー版 図解 9割の病気は自分で治せる」
(岡本 裕/KADOKAWA)
文庫で大好評を博したベストセラー『9割の病気は自分で治せる』3部作のエッセンスを抽出し、読みやすく再構成したベスト版。自分の力で健康を保つための考え方&方法が満載です。