筋肉が落ちると寝たきりや認知症に一歩、近づき、自由な生活からは遠ざかります。
筋肉を意識的に使うことで脳が活性化され、神経のつながりも良くなり、結果、いつまでも自力で動くことができます。「貯筋・ 運動」で"貯筋"の残高を増やしましょう。
筋肉と脳はつながっている!?
意識して運動すると脳と神経と筋肉が活性化
筋肉は筋線維という髪の毛ほどの細い線維がまとまり、束になってできています。それぞれの筋線維1本1本には、大脳から脊髄を通って神経が付いています。筋トレは、脳から「ここを動かせ」という指令が出て、その指令が神経を通って筋肉を動かす、というシステムを働かせることになります。
日常生活の立つ・歩くや目の前の物をつかむといった慣れた動作は、これまでの経験値で「このくらいの力を出せば大丈夫」ということが、大脳→神経→筋肉という指令システムは、すでに分かっています。ですから特に新たな指令を出さなくても筋肉を動かすことができます。これに対し意識して行う筋トレは、その指令システムを作らないと動かせません。それが筋トレの大きな目的の一つです。
いつもは使っていないところをあえて使うことで脳と神経に新たな刺激を与えるので、筋トレは脳を活性化させます。その結果、貯筋(筋線維を太くする)ができます。「ここを動かしている」と使っている部分を意識して行うと、さらに効果が上がります。
道具なし!無理なし!すぐできる!貯筋運動
筋肉が貯まる「座位でのもも上げ」
目安の回数...片脚16回ずつ
今回の貯筋ポイント
「腸腰筋(ちょうようきん)」を鍛える運動です
腸腰筋は日常動作の際に重要な筋肉で、股関節の動きに関わっています。階段を上ったり、浴槽をまたいだりといった主に脚を上げるときに使われますが、脚を上げることが少ないと貯筋不足になっています。腸腰筋が衰えるとつまずいたり、姿勢も悪くなったりします。
安定感のあるいすを使いましょう
以下のようないすを選びましょう。
●脚が動かない。
●座面がなるべくフラット。
●回転しない。
●折りたたみではない。
1 脚は腰幅に開き、いすに浅く座り、背を伸ばし、手はいすに添える。
2 背筋は伸ばしたまま、片脚をゆっくり上げて下ろす。
3 反対の脚も同じように上げて下ろす。
注意!
おなかの力を抜くと、背中も丸くなります!
取材・文/石井美佐 撮影/木下大造 モデル/柴田景子
監修/福永哲夫(ふくなが・てつお)さん
鹿屋体育大学名誉教授・早稲田大学名誉教授・東京大学名誉教授。「貯筋運動」考案者。筋トレの重要性を提案。
運動指導/沢井史穂(さわい・しほ)さん
日本女子体育大学スポーツ健康学科教授。全国で「貯筋運動」の実践、普及に尽力している。