「老後破綻」という言葉が叫ばれて久しい現代。老後の"お金"に何の不安もない、そう言い切れる人はどれくらいいるでしょう? じわじわと上がり続ける物価、止まらない少子高齢化、あてにならない公的年金......。"幸せな老後"を思い描けないとしても、無理はありませんよね。
現に、厚生労働省の調査によると、2017年10月時点の生活保護受給世帯のうち、50%以上が、65歳以上の高齢者世帯。しかも、この割合は年々増えているといいます。貧困に陥らないためには、どうすればいいのでしょうか?
書籍『やってはいけない老後対策』によると、貧困を避ける方法は二つあるといいます。
一つ目は、できるだけ長く働くこと。今は多くの企業で再雇用制度が採用され、60歳で定年を迎えたとしても、65歳まで働き続けることができます。キャリアを活かして独立したり、シルバー人材センターに登録して臨時や短期の仕事を得るという選択肢も。とにかく、何かしらの方法で働き続け、収入を途絶えさせないことが大切です。
公的年金だけでは心許ない。自力で受取額を増やす3つの方法
二つ目の貧困対策は、"自分年金"を作ること。「長年会社に勤めて厚生年金に加入しているから」と、何の対策も取らない人が多いですが、本書によれば、公的年金のみでは生活保護費と同程度の額しか受給できないとか。自力で受取額を増やすことが大切なのです。
自分年金の作り方には様々な方法がありますが、ここでは本書から、3つの方法をご紹介しましょう。
1.確定拠出年金
個人で年金の積み立てを行い、年金資金の運用も自分で行うという制度。中小企業や自営業者を対象に作られた制度ですが、2017年からは、公務員や大企業の社員も一定の条件を満たせば加入できるようになりました。従来の公的年金とは異なり、掛け金が個人ごとに明確に区分されています。また、掛けたお金と運用収益のみが年金として給付されるため、運用次第で受給額が増減するのが特徴です。
最大のメリットは、節税ができること。掛け金は全額「所得控除」になるうえ、運用益にも税金はかかりません。さらに、まとめて受け取る場合は「退職所得控除」が適用され、金額が大きくても税金は取られません。
2.個人年金
民間の保険会社に毎月一定額の掛け金を払い、保険会社が一定の利息をつけて積み立て、老人になったときに一定額を受け取るというもの。支給年齢は保険によって異なります。なかには亡くなるまで一定額がもらえる"終身タイプ"の商品もあり、平均寿命よりも少し長生きすれば元が取れるため、長生きするほどおトクです。多くの場合、加入することで所得控除を受けられるため、節税にもなります。
3.とんちん年金
長生きするほど年金額が多くもらえる、新しいタイプの年金保険。例えば、1000人が加入して700人が年金の受給前に亡くなった場合、残った300人が1000人で積み立てたお金を山分けし、年金として受け取ることができます。解約返戻金や死亡保険金を抑えることで年金額が確保されるという仕組みで、50歳から加入できます。
いずれの年金も様々な商品が登場しているので、資料を取り寄せ、よく比較検討することが大切です。自分のお金は自分で作り、守る時代。しっかり対策を練って、ゆとりある老後を手に入れたいものです。
文/さいとうあずみ
(大村大次郎/小学館新書)
公的年金があてにならないこの時代。恐怖の「老後破綻」に陥らないためにはどうする? 賢い退職金のもらい方から、年金不足分を補う方法、リタイア後の住居選びまで。元国税調査官が、幸せな老後を手に入れるためのテクニックを伝授