「車から降りる」が「ビルから飛び降りる」に! 「VR認知症」を体験してきました

pixta_33564798_S.jpg認知症は"状態"のこと。共存することが大切

認知症はさまざまな原因で脳の細胞が死滅したり働きが悪くなったりして認知機能などが低下し、生活に支障が出る状態のこと。2025年には700万人が認知症になるという推計も。しかし実際の症状などが分からず、不安な方も多いでしょう。
そこで今回、「VR認知症」というプログラムを『毎日が発見』本誌読者に体験していただきました。

ディスプレイとヘッドフォンを装着し、コンピューターで合成した映像・音響効果で、目の前に現実のように感じられる3次元の環境を人工的に作り出すVR(ヴァーチャルリアリティ)。VR認知症とは、この技術を使って認知症の中核症状を再現。360度、その場の状況を体感することができます。

開発したのは、サービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」を運営するシルバーウッド。代表の下河原忠道さんは認知症のある方と触れる中で、「認知症のある方は何かに困っているのだから、周りがサポートすればいい」と気付いたといいます。

「なってしまったらどうしようもない。ならば、その後どうやって生きていけばいいかを考えた方がいいと思ったんです。認知症は風邪などと違い、体験したことがない人が理解するのは難しい。VRにすれば相手の状況をリアルに体験できます」
製作には実際に多くの認知症の方にインタビューして症状をできるだけ再現。音にも気を配り、臨場感を出しました。

「認知症は、不便はあっても不幸ではない。若年性認知症になって5年たっても楽しく生活している方もいます。大切なのは、認知症の方と共存するために〝周りが変わる"ということ。理解して接することができれば、認知症のある方も通常に近い生活を送ることができます」

これまで医療・介護関係者をはじめ1万5000人がプログラムを体験し、認識や接し方が変化したという反響があったそう。今回の取材で感じたのは、認知症の方々が生活に多くの「不安」を抱えているということ。そのようすをご紹介します。

体験してくださったのは、介護経験を経て認知症の方に対する自身の対応が合っていたのかと疑問をもつ牧川さん(60代)と、認知症の方と触れ合う機会がなく勉強したいという小野さん(50代)です。

体験したプログラムは3つ。
まずはそのうちの1つをご紹介します。


【体験1】
「車から降りる」が「ビルから飛び降りる」に!置かれている状況が認識できなくて不安

映像はビルの屋上の縁に立つ場面からスタート。そばにいる介護スタッフから「はい、降りますよ」と言われるものの、"怖い""できない"と恐怖心が湧いてきます。どうしてこの場所にいるのか、なぜビルから飛び降りるよう促されているのか理解できません。
これは自分がどこにいるか分からない、空間の位置関係や距離が認識できない認知症の世界を表現しています。

足元を見るとそこはビルの屋上でした。なぜこんなところにいるのか、なぜスタッフが降りろと言うのか...理解できず、恐怖からパニックに。
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本当は車の中にいました。実際は介護施設に到着し、スタッフにバスから降りる手助けを受けていただけでした。

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<体験後の感想>
「いきなり高い建物に立っていて、なぜこんな場所にいるのか不安でした。最後に状況が分かり、こんな症状もあるのかと驚きました」(牧川さん)
「なぜビルから降りろと言われるのか、ただただ恐怖でした。状況が理解できないので、スタッフの笑顔に余計に怖さが増しました」(小野さん)

 

次の記事「知らない人が部屋の中にいる! 「VR認知症」を体験してきました(2)」はこちら。

取材・文/中沢文子 撮影/奥西淳二

この記事は『毎日が発見』2018年5月号に掲載の情報です。

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