知らないと損する!公的医療保険の仕組みと「高額療養費制度」で家計を守る方法

医療費の窓口負担が減る制度

公的医療保険には、「高額療養費制度」もあります。これは、診察や入院などで一定の限度額を超えると、医療費の窓口負担額が支給されるもの。標準的な収入の場合、ひと月の医療費が約9万円を超えると、超えた分が払い戻されます。これにより、高額な医療費で生活が困窮することを防げます。

ほかにも、出産したときは「出産育児一時金」が子ども一人あたり原則50万円支給されます。亡くなったときに支給される「埋葬料」もあります。

給付の内容は人によって異なります。病気やケガで休んだときに給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」や、出産のために会社を休んだときに給与の約3分の2が支給される「出産手当金」は、健康保険の被保険者のみが対象。健康保険の被扶養者(家族など)や国民健康保険の加入者には支給されません。

加入している健康保険の種類を調べ、給付の内容を確認しておくことが大切です。

<公的医療保険の主な給付内容>
※健康保険の給付を受けるには、2年以内に請求する必要がある
◆病気やケガをした◆
療養の給付......医療費の自己負担分が一部となる
高額療養費制度......医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に超過分を支給
傷病手当金......病気やケガで会社を休んだときに支給

◆出産した◆
出産育児一時金......出産したときに支給(50万円)
出産手当金......出産のために会社を休んだときに支給

◆死亡した◆
埋葬料......葬儀を行う家族に支給(健康保険5 万円、国民健康保険)7万円〈葬祭費: 金額は自治体により異なる〉

<健康保険と国民健康保険の給付内容の違い>
◆健康保険◆
療養の給付......○
高額療養費......○
埋葬料......○
出産育児一時金......○
出産手当金......○
傷病手当金......○

◆国民健康保険◆
療養の給付......○
高額療養費......○
埋葬料......○
出産育児一時金......○(葬祭費)
出産手当金......支給されない
傷病手当金......支給されない

☆Check!☆
個人事業主などは、休業中の補償である「出産手当金」と「傷病手当金」が支給されないので注意が必要です。

入院時に助かる「高額療養費」

万が一大きな病気やケガで入院したら? 公的医療保険に加入していれば自己負担が3割で済むとはいえ、大きな負担です。

そんなときに助かるのが「高額療養費」。医療費の負担が家計を圧迫しないよう、同一月に支払う医療費の自己負担額の限度額が定められています。一定の限度額を超えたら、その額が「高額療養費」として支給されます。

この自己負担の限度額は、所得や年齢に応じて定められています。たとえば30歳で年収500万円の人が医療費の自己負担分として30万円を支払った場合、限度額は8万430円に。差額の21万9570円が高額療養費として支給されます。

高額療養費は、保険適用の医療費が対象。入院時の食事代や差額ベッド代は対象外です。入院などがわかっているときは事前に「限度額適用認定証」を発行しておいたり、マイナ保険証を利用したりすることで、窓口では限度額までの支払いで済みます。

<70歳未満の自己負担限度額>

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出典:厚生労働省保険局

【世帯合算】1人では上限額を超えなくても、扶養している家族の自己負担額を合算できる。
【多数回該当】過去1年以内に3回以上、自己負担の上限額に達した場合は上限額が下がる。

☆Check!☆
自己負担の上限額は、加入者の所得や年齢によって変わります。また高額療養費制度は、健康保険、国民健康保険、どちらの加入者も対象になります。

<高額療養費の申請方法>
①事前に申請する
あらかじめ自己負担の上限額を超えることがわかっている場合は、加入している健康保険に事前に申請して「限度額認定証」をもらう。もしくは、マイナ保険証を利用する。
事前に申請した場合、窓口で支払うお金は限度額までとなる。

②事後に請求する
窓口で医療費を支払った後、加入している健康保険に請求の手続きを行う。高額療養費の支給申請書を提出することで、支給を受けられる。医療機関等から提出される診療報酬明細書によって手続きせず払い戻されることも。2年まで遡って申請できる。

☆Check!☆ 医療費は限度額を超えると払い戻しされる

 
※本記事は塚越菜々子著の書籍『ファイナンシャルプランナーのお金の知識「暮らしでトクする部分だけ」まとめました』から一部抜粋・編集しました。
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