法律、税金、相続のことなどで悩んだら、プロに相談するのが最もスムーズな方法です。今回は、田畑の相続について。司法書士の小脇 盛先生に聞いてみました。
【相談】
夫が田舎の田畑を少し相続しました。しかし、私たちの子供たちは田畑は要らないと言っています...。夫と私が元気なうちに市町村に寄付するなど整理したいのですが、何かいい方法はあるのでしょうか?(女性 70代)
小脇先生の
【お答え】
寄付できることはまれです。まずは地元の農業委員会への相談をお勧めします。
市町村への寄付はほとんどの場合で断られる
非常に難しい問題で、一概には言えませんが、市町村への寄付は、ほとんどの場合で断られてしまい、寄付を受けてくれるケースは多くはありません。そのため、このような土地の処分は、解決が非常に困難な問題となります。
市町村としても、寄付を受け入れてしまうと所有者としての責任や管理費が掛かってしまう上、固定資産税などの税収もなくなってしまいます。そのため、市町村が有効活用できる土地でないと、断られるケースが多いのです。とはいえ、寄付の制度自体はあるので、まずは市町村の窓口に相談してみる価値はあるでしょう。有益な情報が得られるかもしれません。
不要な土地の整理方法としては売却のほか、最悪タダでもいいのなら贈与も考えられます。ただし売却を検討する場合でも、農地は農地法により処分が制限されていますので、勝手に売却してしまうことはできません。農地の場合は、まず地元の農業委員会や近隣農家さんにご相談されてみてはいかがでしょうか。相談者の土地次第ですが、近隣の農家さんなら、買い取ってもらえるケースもあります。
土地の放棄は勝手にはできない
寄付や売却・贈与もできない場合に、「放棄」をできないのかと相談されることもありますが、「要らない」と勝手に土地を放棄してしまうことはできませんし、登記の名義を消してしまう手続きもありません。納税義務を免れることもできません。正直に申し上げて、誰も要らない土地であれば保有し続けるしかないのです。古い先例ではありますが、1966年に土地の所有者による所有権の放棄は否定されています。
相続したばかりであれば、「相続放棄」という選択肢はあります。しかし、相続放棄は原則として相続開始時から3カ月以内にしか行えない上、「プラスの財産」も「マイナスの財産」もまとめてすべて放棄しなくてはならないため、要らない田畑のみ...と都合良くはいきません。
相続人が複数いる場合もまずは相談へ
相続人が複数いる場合、相続人の皆が欲しがらずに土地が共有のまま放置されている間に、共有者が続けて亡くなってしまうケースがあります。その結果、関与者が共有者の子や孫など膨大な数となってしまい、いざ「手続きをしよう!」と思った際に連絡も取れないなど大きな妨げとなってしまいます。私も、ずっと手続きをしていなかった祖父名義の土地の相続登記をしたい...との相談を受けることもありますが、手間と費用の関係でやめられてしまうこともあります。というように、とても難しい問題ですが、まずは地元の農業委員会や市町村への相談をお勧めします。
司法書士 小脇 盛(こわき・しげる)先生
東京司法書士会所属、司法書士小脇事務所所長。個人からの依頼による相続や遺言の相談をはじめ、不動産登記・商業登記や債務整理から成年後見まで幅広い案件を担当している。