「居酒屋を経営しています。ある日、やって来た5人の客。料理を気に入ってくれたようで、次回の予約をして帰っていきました。そして、迎えた予約当日。2時間が過ぎても現れません。これは、無断キャンセルかと諦めかけていたその時のことです」

■常連さんを断って5人の来店を待っていたのだが...
私は50歳を迎えた年に、妻と二人きりで取り仕切る、こじんまりとした居酒屋を始めました。
店は10人も入れば満席という、カウンター席だけのオープンキッチンになっています。
開店して5年くらい経過して、それなりに忙しい日々を過ごしていたある日のことです。
近くのホテルに宿泊していて、ホテルから紹介されたであろう5人のお客さんがみえました。
5人とも年は50前後でしょうか、似通っていて上司と部下なのか、同僚同士なのかは判然としません。
自ら名乗ったのは会社名だけです。
誰もが知る超大手企業でした。
5人は店の味を気に入ってくれたようで、ずいぶんと飲み食いしてくれました。
そして勘定を終えた帰りがけに、「〇月〇日7時ごろ今日と同じ5人で来るから、あの料理とこの料理に、あの酒も用意しておいてくれるかな。あとは適当に任せるから」と、言い置いて帰りました。
あの料理とこの料理とは、そのとき居合わせた店の常連さんが予約注文で召し上がっていた、「鯛の骨蒸し」と「和牛ヒレステーキ」です。
あの酒とは、地酒として名高い高価な純米大吟醸酒です。
「はい、わかりました。お越しをお待ちしております」と、私と妻は5人を見送りました。
そして、〇月〇日になり、7時を何分過ぎても5人の姿も見えなければ、電話の1本も来ません。
そのときの店には、常連さん2組5名が居合わせていました。
これで、予約の5人が見えたら満席です。
8時を回り9時になっても音沙汰なしです。
この間に、顔見知りのお客さんが幾組か顔をのぞかせましたが、お断りするしかありません。
これが、小規模店の泣き所です。
「鯛の松皮造り」「桜海老のかき揚げ」「鯛の骨蒸し」「和牛ヒレステーキ」などの仕込みはすべて終えて、後はお出しするだけ。
9時を何分か回って、これはすっぽかされたと諦めかけたときです。
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