「50代の女性です。ひとり暮らしをしている友人宅へ泊まりがけで遊びに行ったときに、奇妙な習慣を目撃してしまった私。実は、そこには切実なおひとりさま事情が隠れていました」
■しっかり者で几帳面なはずの友人が見せた奇妙な習慣
高校時代からの友人のK子(51歳)は、地元の企業で管理職を務めるバツイチ女性です。
昔からしっかり者で几帳面だったK子。
ひとり暮らしのマンションへ泊まりがけで遊びに行くと、掃除が行き届いたリビングにはランニングマシーンやバランスボールが置いてあり、洗面所には高そうな美容液や化粧品が整然と並んでいました。
誘惑に負けて夜中にカップラーメンを食べてしまう私(51歳)とは違い、美容と健康にはかなり気を遣っている様子。
たしか高校時代も、女子トイレに籠って鏡の前で必死に寝癖を直したり、制服のプリーツがよじれているからと家庭科室にアイロンを借りに行ったりなど、見た目を気にしていたのを思い出しました。
そんな意識高い系のおひとりさまK子の「奇行」を目撃したのは、そろそろ寝ようという話になったときです。
部屋着姿だったK子が、なぜかシルクのブラウスとスラックスに着替え始めたのです。
「いまから出かけるの?」
驚いて尋ねるも平然と「もう寝るよ~」とベッドへ向かうK子。
でも、彼女の格好は明らかに外出着なのです。
■洋服のまま眠る理由の裏には切実な事情が...
まさか几帳面なK子に限ってそんなはずはない...。
そう思いつつ、なぜこんな服を着るのか恐る恐る尋ねてみました。
「もしかして、起きたらすぐ出かけられるようにその格好で寝るの?」
私の質問に、K子は大真面目な顔で質問を返してきました。
「万が一、夜中に具合が悪くなって救急搬送されたり、運悪くそのままポックリ逝ったりしたら、最初に私を見つけてくれるのは誰だと思う?」
配偶者とはとっくの昔に離婚していて、子どももいないK子。
3年前に父親が他界し、母親はグループホームに入所していると聞いています。
「たぶん第一発見者は、救急隊員かマンションの管理人さんでしょ」
K子がいわんとしていることは分かりました。
つまり、見ず知らずの赤の他人に無防備な姿を見られたくない、だから不測の事態に備えて洋服のままで寝ていると。
たしかに人生100年時代とはいえ、50代で突然死しないとは言い切れません。
「でも、洋服のまま寝たらリラックスできないのでは? それに夜中に死ぬほど具合が悪くなったら格好なんて気にしている場合ではないと思うけど...」
異論を唱える私に、K子はあるトラウマを話してくれました。
それは同年代の同僚男性が、ひとり暮らしのアパートで病死していたというショッキングな出来事でした。
発見時、同僚男性はパンツのみで寝ていたと聞いたそうです。
同じくひとり暮らしのK子は、その話に「他人ごとではない」と身震いしたのだとか。
対策はないかと考え、そうして洋服のまま眠るという合理的なのか非合理的なのか分からない結論に至ったようでした。
高校時代から外見を気にしていたK子らしい理由でしが、翌朝、寝巻きのブラウスとスラックスから、外出用のブラウスとスラックスに着替える光景は少し滑稽でもありました。
「不本意な姿で突然死するなんて事態にならないよう、お互い健康には気をつけようね」
そう誓い合って別れたのでした。
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